二次_読み切り

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このお話は「乙女だらけのクリスマスParty♥信義」にて、
【同じセリフでお話を書こう】という企画にアップしたものです。

 ※脱字を修正したのみで、それ以外の内容は同じです。

お題は、こちら
『粉雪が頬に舞い降りた。溶けた雫が涙のように流れ落ちた。』

-----------------------------------
『蒼い炎』

陽が暮れる少し前から粉雪が舞い始めた。
ふと、目の端に赤いものが映る。
回廊を歩いていた天音子ユチョンは立ち止ってそちらに足を向ける。

それは、滑るように庭の植木を避けて通り慣れた道なき道を進み、
やがて屋敷を取り囲む門の塀に突き当たると、身体を少しかがめた。
『跳ぶ』
思った瞬間、声をかけていた。
「モビリョン」
呼ばれた火手印は、体勢を戻してゆっくりと振り向く。にっこりと
口の端を上げて笑う顔に、ユチョンは息が詰まる。

『どこに行く?何をしに行くつもりだ?』
聞かなくてもわかっている。それでも聞かずにはいられない。
「どこに行く?」
束の間でもいい、時を稼ぎたい。
雪が本格的に降り出せば、往来の人通りはまばらになるだろう。
そうすれば、モビリョンが求める人肌も、今宵は得られぬかもしれない。

ユチョンの思惑など手に取るようにわかる。
モビリョンは、沸きあがる衝動を抑えられない自分をなだめてやりながら
じっとユチョンを見つめた。

粉雪がモビリョンの火照った頬に舞い降りた。
溶けた雫が涙のように流れ落ちた。

それが涙ではないことぐらい、ユチョンは百も承知だった。
「ごめん」
つぶやくように言うと、モビリョンは猫のようにしなやかな動作で
塀の向こうに跳んで消えた

そんな気持ちが、一体お前の中にどれほどあるのか、
お前を裂いて、欠片でもいいから見つけたい。

こみあげる怒りをぶつける先もなく、曇天の空を仰ぎみる。
白い粉雪は次から次へと舞い降りてくる。
粉雪がユチョンの頬に舞い降りた。溶けた雫が涙のように流れ落ちた。

『降れ、降れ、もっと降れ』
雪で獲物が見つかることのないよう。
落胆して自分の懐に戻ってくるよう。

やがて、雪に濡れた身体が氷のように冷たくなってくる。

『このまま心も凍りついてしまえばいい』
叶うことなどない願いを胸に、ユチョンはその場に立ち尽くしていた。

※このひとつ前にも「お知らせ」の記事を書いています。

------------------------
9月26日から29日までが今年のチュソク(秋夕)だそうです。
旧暦のお盆ですね。

ドラマの15話で、毒に侵されたウンスが意識を失っているときに
チャン・ビンに促されてチェ・ヨンがウンスに話をします。

「馬に乗ること。短剣の扱いも教えて差し上げましたから、次は
 釣りを教えて差し上げます。だけど・・・医仙は好きじゃなさそうだから・・・
 中秋節(秋夕)に嘉俳遊びというものがあります」

「満月が登って沈むまでの間、人々は夜を徹して踊り明かします。
 酒も飲んで、歌も歌いながら・・・」

「それは本当にお気に召されるはずです。それに・・・」

<嘉俳遊び>
韓国語가배 놀이(カベ ノリ)
신라(新羅)第3代国王儒理(ユリ유리)のとき, 陰暦8月15日の仲秋に宮中で
行なわれた宮中遊び。
7月16日から全国の女性たちを2組に分け、 王女二人が各1組ずつ率いて
昼夜機織りをさせ、8月14日の夜にその結果を比べて負けたほうが翌日
勝ったほうにごちそうして、ともに歌舞などをして楽しんだ。
(Daumより)

信義のOSTには「Dancing In The Moonlight 」という曲があります。
3話のキ・チョルの屋敷での宴のシーンと4話の忠恵王の宴のシーンで使われています。
この音楽、タイトルからするとチュソクにも合うのではないかと思います。
(ダンシング・イン・ザ・ムーンライトなので・・・月明かりで踊るって訳かしらん?)


The Faith OST 20 Dancing In The Moonlight by... 投稿者 jeonjm22

以前、月に関する本を読んだとき、アジアでは月を温かいイメージとして捉えるが
ヨーロッパでは冷たいイメージとして捉える傾向があると書いてありました。

どうやら気候が関係するようです。
温暖で湿潤なアジアでは月の色が黄色みを帯びていて優しいイメージがあるのだとか。
反対にヨーロッパでは空気が乾燥しているためか、月の色は白く冴え冴えとしており、
冷たいイメージを持つ傾向にあるとか。

同じように丸いのに、色によって持つイメージが異なる。
なるほどねぇと感じた憶えがあります。
(そういえば龍(ドラゴン)に対するイメージもヨーロッパとアジアでは異なる気がします。
 これは色が関連しているわけでもなさそうですが)

私が何をしているのかといいますと・・・

秋夕ネタで何か書けないかなぁと思案していて、もしかしたらこの内容で
何か思いつかれる作家さんがいらっしゃるかもと思い、調べる手間を省くために
情報をそっと提供させて頂いているところです(笑)
(内容が間違ってても怒らないでくださいナ)

ではでは
本日はお越し下さいましてありがとうございます(*^_^*)

このお話は、りえさん主催の「シンイでなつまつり2015」に参加させて頂いたお話です。

6話で、カンファドに向かうチェ・ヨンとウンスが、二人きりで
夜を過ごしているシーンの、火手印(ファ・スイン)が立ち去った後の
設定です。
(どうもやっぱりカンファド関連の設定から離れられないワタシ)
    よかったら他のお話ものぞいてみてくださいな(なにげに宣伝♪)
           二次小説のINDEXへジャンプします。

今日は待ちに待ったおまつり当日(ヒャッホー)
子供をさっさと寝かしつけて夜10時頃から私もいろんな企画に
参加してみたい!と朝から鼻息も荒くフンフン!しております(笑)

さあ、まつりだ~!!
//////////////////////////
<流星光底>

 火手印が、意味深長な言葉を残して闇の中へ消えて行く。距離を詰めていた追尾の集団
も、火手印が消えた方向へと去った。チェ・ヨンは背を向けて眠っているヨインを窺う。
ヨインの身体は、ゆったりとした間隔で上下動を繰り返している。それを確かめて、よう
やく緊張をとく。
 チェ・ヨンは、木の枝を焚き火にくべる。その炎に照らし出される表情には、不安の翳
が濃く映し出されている。
『ヨインの心を、七日のうちに得られるか。それが王とキ・チョルの真の対決か。果たし
て、今もそうなのか?』
 徳城府院君キ・チョル。奴は、ヨインの心を得ることになど興味はない。最初から始末
するつもりで引きずってきたのだ。オレが屋敷を訪ねたことで、奴は趣向を凝らした別の
企みを思いついた。明日、奴はその企みで王を翻弄するだろう。そして、王はその企みを
知る術がない。
 チェ・ヨンは揺れる炎を見つめて、諦念のため息をつく。
「ウーン」
 不意にウンスが身動きして声をあげる。チェ・ヨンは、顔を上げて様子を見守る。やが
て、寝返りをうって目を覚ましたウンスが、チェ・ヨンに視線を向ける。
「起きてたの?」
 問いかけられて、一瞬固まる。
「お休みください。私ももう寝ます」
 それだけ言い、背後の石垣にもたれて軽く目を閉じる。
「そう」
 それで気がすんだらしく、ヨインはそれ以上何も言わなかった。だが、しばらく待って
もヨインが寝ついた気配がしない。
 気になって目を開けると、ヨインは仰向けの姿勢で天に向かって手を伸ばしていた。
「医仙?」
 身体を起こして呼びかけるが、返事はない。
「わぁ・・・」
 ようやく聞こえたのは、感嘆のため息だった。

 チェ・ヨンが野営に選んだのは、山の中にある小さな平地だった。平地には、家か小屋
でもあったのか、土台の石垣が残っていた。周囲の木々は、枝が平地にかからぬよう掃(は
ら)われており、空から見るとちょうどぽっかりと空間が空いている。
 その空間いっぱいに広がっていたもの、それは満天の星空だった。
『星が降ってくる』
 ウンスは、本当にそう思った。
『昔は、空が今よりももっと近かった?星ももっとたくさんあったのかしら?』
 目の前に広がる夜空の迫力に圧倒されて、ウンスは声もでない。しばらく見とれてから
今度は手を伸ばしてみる。星が掴めるほど近くに見えて、空に向かってそろそろと伸ばす。
そうして伸ばした指先に何かが光る。
「あ!流れ星よ!今の見た?!」
 驚いてチェ・ヨンに話しかける。流れ星なんて初めて見た。興奮冷めやらぬうちに、さ
っと流れる星をまた見つける。
「あ、ほら!」
 ウンスは、遥か昔の高麗の夜空に広がる星空に酔いしれる。
 興奮してはしゃぐヨインをチェ・ヨンは不思議そうに見つめる。日暮れ前から、一面の
雲に覆われていた空が、夜更けて晴れ渡ったようだ。空を仰いでみたが、何の変哲もない
星空が広がっているだけで、喜ぶ理由がよくわからない。そもそもチェ・ヨンは、方向や
天候を確かめる以外に、目的もなく星を眺めたことなどあまりなかった。
『星がそれほど珍しいのですか?』
 もう少しでヨインに尋ねてしまうところだった。チェ・ヨンは天界にも星があったこと
を知っている。だから、喜ぶ理由がわからなかった。
 それでも思い出してみると、天界の星々の瞬きはとても弱く、星はほとんど見えなかった。
家々や建物の灯りが、眩しいほどに明るかったせいかもしれない。
 やがて飽きるだろうとしばらく放っておいたが、ヨインは一向に眠ろうとしない。明日
の出立に差支えては、ヨインの身体にもさわる。チェ・ヨンは、陶酔しているヨインに声
をかける。
「もうお休みください」
「そうね・・・」
 ウンスはそう答えたものの、上を仰いだまま目を閉じる気配がない。
 そのとき、さあっと風が吹く。焚き火の火が大きく揺れ、ヨインが「ックション!」と
くしゃみを一つした。空気がひんやりしてきたのを、先ほどからチェ・ヨンも感じていた。
 チェ・ヨンは丸めてそばに置いていた風防けをウンスに差し出す。
「これを」
「あなたはどうするの?」
 身体を起こしてマントを受け取ると、広げて身体にかける。
「お構いなく」
「そう。あ!ねぇ、薬は飲んだ?」
「お休みください」
 言いつけどおりに飲んだことを、なぜか素直に「はい」と言えず、「寝ろ」とだけ繰り返
す。
「ちゃんと飲んでね」
 ウンスは、再び背を向ける。チェ・ヨンは、もう少し薪になる枝をくべてから寝ようと
していたが、
「ねえ」
 と、声をかけられる。
『呆れた。そっけなくしてというのに、全く通じない』
 チェ・ヨンが返事をしなくても、聞こえているなら訊いてくれている。それをわかって
いるウンスは、お構いなしに喋る。
「私も欲しいわ」
「・・・?」
「このマントよ。すごく便利だわ。旅には欠かせないアイテムね。日避けになるし、寒い
時には布団代わりにも使えるのよ。カラーは黒しかないのかしら?もっと明るい色が欲し
いんだけど」
「・・・眠れないのなら、眠れるようにして差し上げましょうか?」
 少し凄みを利かせて、チェ・ヨンがようやく口を開く。
「寝たわよ。もう、寝たってば!」
 ウンスは慌てて風防けの中に顔を埋めて、ようやっと寝る体勢に入る。
 ずいぶん経ってから、規則的な深い寝息が聞こえてきた。寝息を聞いているうちに、チ
ェ・ヨンも眠気に襲われる。少しだけ仮眠をとろうと、石垣にもたれる。天界の薬が、心
地よい眠気を誘うようだ。眠りにつきながら、チェ・ヨンはぼんやりと考えていた。
 ヨインには「ユ・ウンス」という名前があった。チェ・ヨンは、声に出さずにその名を
呼んでみる。声に出してその名を呼べば、ヨインの居場所がわかって、天界から迎えが来
てしまうのではないか。そんな漠然とした思いがあった。
『安易に呼べぬ』
 眠りに落ちながら、チェ・ヨンはそう思っていた。

<おわり>
星空

(あとがき)
『流星光底』の本来の意味は、
「刃を振り下ろした際、流れ星のようにきらめくさま」
だそうです。

日頃からステキなタイトルをつけたくて仕方なかったので、
ネットで検索して話の内容に関連した語句を見つけて大喜び。

意味は全然違いますが、気に入ったのでタイトルにしました。
「天の流れ星(ウンス)が、光も届かぬ地の底にいたヨンを明るく照らす」
って感じの意味で・・・どうでしょう。

では、みなさん。
よい一日を♪

PS、りえさん。
壁紙の力をお借りして(自分なりに)いいお話が書けました。
本当にありがとうございました(この想い、届け~~!!)


記事のアップが間に合わず、アップアップして
会社でコッソリ、ヒヤヒヤしながら何とか記事を
アップしたおりーぶでした。


乗馬にまつわる小話を一つアップします。

カンファドにはあと少しで到着する・・・てところでしょうか(テキトー)

今回は「馬の降り方」に着目しました。
ウンスってチェ・ヨンに乗馬を教えてもらうとき、岩を踏み台代わりにして
馬に乗ったでしょ?
降りるときはどうしたの?手ごろな岩があってそこから降りた?
チェ・ヨンが抱っこして下してくれた?チェ・ヨンのことだから降り方も
ちゃんとレクチャーしてあげたのかしら?
などと考えてネットで馬の降り方を検索しました。

馬の降り方 byやまおやぴさん

こちらのサイトで「馬の降り方」を確認してから読んだほうがシーンが
想像できるかも・・・

////////////////////////////////////////////////

「少し馬を休ませます」
 振り向いてそう告げると、慣れた動作でチェ・ヨンが馬を降りる。
無駄のない身のこなしが目に焼き付く。
しばらくぼんやりと見とれていたら、向こうが怪訝な表情を浮かべた。
それで、我に返ってあたふたと馬から降りる。
『あ!』
 鐙(あぶみ)に左足を掛けたまま、外すのを忘れていた。
左足が引っ掛かったままの状態で右足だけで地面に着地したものの、
体勢を保てずに後ろにのけぞる。
「わわっ!」
 全身の毛穴から汗がブワッと吹きだす。
『こんな恰好で転んで馬に引きずられたら、骨折なんかじゃ済まない』
 掴まるものを求めて振り回した伸ばした手が空を切る。
『ジーザス!』
 思わず祈る。
 直後、背中にドン!と衝撃が伝わる。
『・・・?』
 ちっとも痛くない。
 閉じていた目を恐る恐る開けて後ろを振り向こうとしたら、頬と頬が
触れ合うほどの距離にチェ・ヨンの顔があった。

 チェ・ヨンは、すんでのところでウンスを受け止めると、そのまま
ウンスの背後から手を伸ばして、鐙に掛かったままの左足を外してやる。
ウンスが両足でちゃんと立ったのを確認してから掴んでいた両手を放して、
一歩下がる。
「怪我は?」
「大丈夫。何ともないわ」
「お気をつけ下さい。降りるときには・・・」
「鐙から足を外しておくのが鉄則。そうよね?」
「はい」
「・・・気をつけるわ」
「はい」
「・・・」
「・・・」
 二人が、二人とも心ここにあらずで、言葉が途切れがちになる。
チェ・ヨンはウンスの傍を通り過ぎ、チュホンの手綱を引きながら
ゆっくりと歩き出す。ウンスも手綱を引いて、あとに続く。

珍しいことに、ウンスは一言も口を開くことなく歩き続けている。
チェ・ヨンはいつもの如く、黙って歩いている。

抱きしめられた両腕と背中が憶えている。
頬にかかった息遣いを、匂いを、熱を憶えている。

抱きしめた両手が憶えている。
その重みを、顔をかすめた赤い髪を、そしてあの香りを。
憶えている。

//////////////////////

ウンスがヨガとか習っていたら柔軟性を生かして
Y字バランスでなんとか体勢を保ったかも(笑)

私が狙ったイメージシーンはこれなんですが・・・
mousou.png


ちなみにウンスは11話のラスト辺りで、チェ・ヨンが死ぬつもりで
キ・チョルに会いに行ったとチェ尚宮から聞いて慌てて戻ろうとします。
その際には同行していたトンマンに手伝ってもらって馬に乗りました。
背の高い馬は女性が一人で乗るにはなかなか厳しいようです。
(でも、チェ尚宮はその馬に乗ってやって来たんでした・・・さすがはチェ尚宮)

で、12話の冒頭でテマンを見つけて、ピョンと後ろに跳ぶ感じで
降りています。(正しい馬の降り方ですね、きっと)

機会があればご覧くださいナ
このお話は6話で、チェ・ヨンが戻らないテマンを案じてウンスをマンドゥ屋に
残して様子を見にいこうとして・・・というシーンをふくらませたお話です。

ではどうぞ~
7/19に記事をアップしましたが、その後8/8に加筆修正して再アップしています。

06_マンドゥ屋1

 大きな肉まんをあっという間に平らげると、早速おかわりを頼む。卓を挟んで向
かいに立つチェ・ヨンは、そんなウンスをしげしげと眺める。
『天界では、家族でもない他人、それも男の前でものを喰うことに、躊躇いや恥じ
らいはないのか?それとも、このヨイン(女人)だけがそうなのか?』
 馬留めにチュホンを繋いで戻ると、ヨインは先に店先の卓に座り、注文も既に済ま
せていた。店は通りに面しているのでかなり目立つ。中に入るように促すと、天界の
言葉混じりで文句を言い、立ち上がる気配すら見せない。
『言っても無駄だ』
 早々に諦めて、近くの椅子に腰を下ろす。向かい合わせに座るのは抵抗があるが、
傍にいなければ守ることが難しい。居心地が悪いので、通りの方に身体を向ける。
『面倒だ』
 そうしてヨインを横目にとらえながら、水面下で起きている策謀について一人静
かに考える。

 蒸し上がったばかりの肉まんが載った皿が運ばれてくると、ウンスは火傷しない
ようにフウフウと冷ましながら、今度はゆっくりと時間をかけて食べる。そうして、
ようやく顔を上げる。
『ほら、やっぱりテラスのほうがいいじゃない。外の景色も見えるし、これで日よ
けのパラソルがあれば文句ないけど。まあ、いいわ』
 ウンスは満足そうに肉まんを頬張ると、目の前に座っているサイコに視線を向け
る。サイコは通りを行き交う人々を、見るともなしに眺めている。
 途中から二人きりになった(正確には馬も一緒だけど)。何気なく振り向いたら、
サイコが馬を引いていた。テマンがトイレにでも行ってるのかと思っていたけれど
戻ってくる気配がない。
「あの子は?」
「手術道具を取りに行かせました。すぐ戻ります」
「すぐって?私たち、けっこう歩いて来たわよ」
「足の速い子ですから」
「じゃ、今日中に戻ってくるってこと?すごいわねぇ」
「夜までには戻ります」
「へぇ、そうなんだ」
 話は終わったのに、そのときのサイコはまだ何か言い足りない様子だった。
『何だったんだろう?言おうとして止めるなんて、余計気になるじゃない』
 会話を反芻して・・・ようやくわかった。
『ああ、なるほど。サイコはあの子を待ってるんだ』
 チェ・ヨンを観察していると、時折来た道のほうをじっと目を凝らして見ている。
それで、自分の推測が当たっていることを確信する。
『やっぱり頭を使うには、ちゃんと食べなきゃだめよね』
 満足したウンスは、もう一つ気になっていることを解決しにかかる。
 ウンスはチェ・ヨンの顔色を見て、腹部に目をやる。昨日死の淵にいた人が、今
日は一緒に長い距離を歩いている。しかも、健康な自分より遥かにしっかりした足
取りで。具合が悪そうには見えない。それでも、前みたいに痛みを我慢しているの
では?と気になっていた。
『腹が立つぐらい我慢強いものね、まったく!』
 チェ・ヨンの身体をチェックしていたウンスの視線が、ある箇所についと引き寄
せられる。上着の右袖に、赤く点々としたものが見える。
『血だ』
 飛び散った血が乾いた跡だ。
『この人の血じゃない』
 頭がそのことを理解した途端、心臓がドクンと大きく打つ。
 倒れた兵士たちの傷口から、ドクドクと溢れ出る血。土気色の兵士の顔。昨夜
典醫寺で起きた騒動が脳裏によみがえり、そのまま別の光景へと切り替わる。
 酒席が用意された楼閣まで案内されていたとき。回廊を歩きながら、豪奢な屋敷
のあちこちに視線を巡らせていると、庭の四阿(あずまや)の傍で作業をしている
数人の兵士が目に入った。兵士たちは筵(むしろ)でくるんだ荷をいくつか戸板に
載せて、数人がかりで運ぼうとしていた。
 その光景から思わず目を逸らして、前を歩く人の背中だけを見て楼閣へ向かった。
『あれが何だったのか、わかっていたはずよ、ウンス』
 自嘲気味に自分に問いかける。
 ええ、そうよ。知っていたわ。四阿の欄干には赤黒い汚れがベッタリとついてい
た。低い植木には人が倒れ込んだような凹みもあった。そこかしこに、争った形跡
があった。何があったのかは明らかだった。無言で作業している兵士たちの昏い顔
が、それを物語っていた。
 だけど、知らないふりをして歩いた。
『また誰かが死んだ。それって私のせい?』
 そのことについて考えたくなかった。自分のすぐ後ろにいたサイコに、どんな顔を
していいのかわからなかったし、動揺を知られたくなかった。
 ウンスはしばらくじっと考えこむ。そして意を決すると、顔を上げてすっかり冷
めた肉まんを、再び機械的に口に運ぶ。咀嚼しながら、苦い記憶を再び胸の内に押
し込む。
『ここまでよ、ウンス』
 そう、ここまでだ。ここまでにしよう。目の前に座っているチェ・ヨンの横顔は、
いつしか険しい顔つきに変わっている。
『何かあったのかしら?・・・ううん、もう私には関係ない』
 元の世界に戻ろうとして、この人が私を引き留めた。信じていたのに裏切られたか
ら逆上して、もう少しで殺してしまうところだった。でも、回復したのなら、私がこ
こにいる必要はない。
『これ以上お互いに関わるべきじゃないわ』
 食べ終わったら話を切り出して、ここで別れよう。ウンスは決意していた。

 テマンが戻らない。あの子の脚であれば、こちらが茶屋に着くまでには戻ってく
るはず。テマンが走りだしたとき、追尾の集団は慌てることもなかった。奴らとは
別の部隊が、どこかで待ち伏せていたのだろうか。
『テマン、無事か?』
 心の中でつぶやく。
 キ・チョル。奴の狙いは、やはり王なのか?王が膝をつけば、ウダルチに属すオ
レもまた奴に屈することになる。「一石二鳥」という発言とも符合するが、どうも
釈然としない。真の狙いは別のところにある。そんな気がしていた。それに・・・
 チェ・ヨンはおもむろに顔を上げる。
『あの目だ』
 ヨインを見ていた眼差しに、胸騒ぎを覚える。
 王に恥をかかせるつもりで臨んだ御前会議で、逆にヨインに恥をかかされること
になった。離れに閉じ込めていた際の扱いからも、奴がヨインを軽んじていること
は明白。
 だが、酒席では全く異なる顔を見せた。ケンカ腰で立ち上がって喋るヨインを、
奴は黙って眺めていた。呆れるでもなく、蔑むわけでもなく、ただ見ていた。あの目
を思い出すと、わけもなく不安になる。
『追尾の中には、奴の傍近くに仕える火手印がいる。ならば・・・』
 奇襲をかけて揺さぶれば、狙いや企ての一端がわかるかもしれない。テマンが戻
らぬのも、奴らの仕業かどうかもわかるはず。考えたら居てもたってもいられなく
なった。
 チェ・ヨンは、椅子を蹴立てて立ち上がり、ウンスのほうをまともに見もしない
で、端的に告げる。
「ここでしばらくお待ち下さい」
「どうして?」
「どうも不安ですので」
「何が?」
 自分にはもう関係のないこと。そう思っていたのに、やはり気になってウンスは
聞いてしまう。
「少し見に行って・・・」
「どこに?」
「二度は申しません。今後「なぜ?どうして?」とお尋ねになっても、私から答え
を聞くことはできないでしょう。ですから、私が「待て」と言えば、ただお待ちに
なればいいのです。長くはかかりません。うろちょろなさらず、その肉まんをたく
さん召し上がりながら、ここでお待ち下さい」
 ウンスがどんな風に自分を見つめていたのか、チェ・ヨンは知りもしない。言う
だけ言って、チェ・ヨンはウンスの返事も待たずに行こうとする。
「待って。一つだけ教えてから行って。どっちに行けばいい?あの天の門っていう
のがある場所へは」
「・・・何と?」
「悪いけど、私はあなた達のあんな賭けには興味ないわ。患者を治せなかったら私
の首を刎ねるって言うじゃない。そんなこと、どうして私がしなきゃいけないの?
だから、これまでのことに免じて私をこのまま解放して。一緒に行こうって言って
るんじゃないの。私一人で行くわ。だから、道だけ教えて」
「あの、医仙」
「だから、サイコ。お宅は行きたいところに行って。私は逃げたってことにしまし
ょう。ただ・・・旅費だけ少し貸して。返す当てはないけど。それくらいはしてく
れるでしょ?そっちは・・・私を恋慕してるんだから」

 向かい合ったまま、しばらく沈黙が流れる。
 チェ・ヨンは、ぎこちない動きでヨインから視線を外す。両手の拳を、色が白くな
るほど強く握りしめていた。そうでもしなければ、ヨインの腕を力任せに掴んでしまい
そうだった。
 ともすれば、我を見失いそうになるのを、必死に自制する。一方で、これが怒りと
呼べる感情ではないこともわかっていた。
『腹の底からこみ上げてくる、この気持ちは一体何なのか』
 自身に問いかけたチェ・ヨンは、その正体を突き止めかけてやめる。知ってしまえば、
その気持ちに名をつけてしまえば、もう戻ることは出来ない。そんな気がしてためらった。
『こんな風に・・・』
 前にも、己を翻弄する嵐のような風が、心の中で吹いたことがあった。
 チェ・ヨンは目を閉じて、その風を思い浮かべる。轟々(ごうごう)と、身体ごと攫(さ
ら)って行くほどの猛烈な風が吹きつける。チェ・ヨンは、その風に背を向けて立つと、
足を踏ん張って、腕の中にある柔らかな陽だまりを腕の中に抱き寄せる。陽だまりは腕の
中から抜け出そうともがくが、チェ・ヨンはその動きを封じこんで大切に胸の中に抱く。
そうするうちに風の勢いは弱まり、やがて凪が訪れ、辺りは静寂に包まれる。
 記憶の中の風と、先ほど心の中で吹き荒れていた風が、いつしか同化していたようだ。
その風が止んだとき、チェ・ヨンは心の平静を取り戻していた。
 深く息を吸って吐く。そうして顔を上げると、再びヨインと向き合う。

 チェ・ヨンは、ウンスを見つめる。視線を受け止めるウンスの瞳は揺れていた。
『怯えているのか』
 無理もない。治療出来なければ、世を乱した罪で罰せられ、下手をすれば命を落と
すことになる。治療に必要な道具は手元にない。ヨインはまだ知らないが、道具を取
りに行ったテマンは未だに戻らない。ヨインにとって、状況は悪くなるばかりだ。
「ここで別れましょう。約束のことを気にしているならもういいわ。私は自分で帰
るから」
 黙り込んだチェ・ヨンに、ウンスがそう言う。もしも、チェ・ヨンがあの約束にこ
だわっているなら、心の負担を軽くさせて、すんなりと解放してもらう。ウンスは
そう思っていた。
「どうやって?」
「・・・ヘ?」
 何を聞かれているのか咄嗟に判らず、間が抜けた声が出てしまう。
「どうやって天の門まで行くつもりですか?」
「それは・・・えーと・・・そうね・・・」
 自分でも驚いたが、具体的なことなど何も考えていなかったことに、聞かれて初め
て気づく。気持ちが慌てる。チェ・ヨンは、反対にどんどん冷静になっていく。
「歩いて行くつもりですか?」
 こうなったら引き下がれない。
「・・・そうなるかしらね」
 あごを上げて腕組みをすると、平然とした表情を作って答える。
「イムジャの足ならば、ひと月、いえそれ以上かかります」
「・・・そんなに?」
 ウンスは驚いて絶句する。「ひと月」という言葉に、露骨にひるむ。
 考えてみたら、天の門がどこにあるのか全く知らなかった。まず、どこにあるの
か教えてもらって、地図と詳細なルートを書いてもわらないといけないことにも、よ
うやく思い至る。
『困った。職場から半径1キロ以内でも迷うのに、無事に辿り着けるかしら』
 焦りや不安、緊張がないまぜになった感情が、そのまま顔に出る。
 ウンスの表情に、チェ・ヨンの心は揺れる。闇雲にただ逃げたい、後先のことなど
考えず、追い詰められて一人で行くと言い出したのかと思うと、このまま無理に連れ
て行けない。
 帰してさしあげる・・・今は無理だ。背後にいる追尾は、簡単に蹴散らせない。
オレが奴らを引き受ければ、ヨインは一人で行くことになる。下界を知らぬ方を一
人で行かせることなど到底出来ない。
 そのうち、指を噛んで黙りこくっていたウンスが、パッと顔を上げる。明るい顔
つきをしているウンスとは反対に、チェ・ヨンは憂鬱な顔になる。何を思いついた
のか、おおよその想像がつく。それを駄目だと告げたときの、ヨインの落胆ぶりを
想像すると、先んじてため息がこぼれる。
「じゃあ、前みたいに馬車に乗ればいいわ」
「護衛が要ります。馬車を使うのは金を持っている者だけです。故に、山賊や盗賊
に襲われるのは必定。そのために護衛が必要なのです」
「じゃあ、その護衛を雇って・・・」
「信用できる者で守りを固めねば、雇った奴らに馬車を盗られて、身ぐるみを剥が
されます」
「なら、その信用できる護衛を」
「おりません。ケギョンから離れた地では、私の伝手を頼れません」
 ウンスが言い終わる前にチェ・ヨンが即答する。
「じゃ、どうやって行けって言うのよっ!?」
 チェ・ヨンの予想は少し外れた。言い出す端から却下されてしまい、怒ったウン
スがチェ・ヨンに詰め寄る。前々から覚悟を決めてはいたが、いざとなると心構え
が必要になる。少し息を吸い込んでから、チェ・ヨンが口を開く。
「馬で参りましょう」
 何を言い出すのかと、ウンスは即座に突っぱねる。
「だから、馬は」
 「イヤよ」と続けようとしたウンスに、チェ・ヨンが続けて言う。
「馬は、移動に適しております。乗り方さえ覚えれば、自分で歩く必要もありませ
ん。何より、目的の地に早く辿り着けます」
 歩き詰めでくたびれて、拒む気持ちも小さくなっているだろう。今ならヨインも
説得に応じてくれるのではないか。それを見越しての提案だった。
「私とともにカンファドに行くにしろ、私と別れて天の門に行くにしろ、馬に乗れ
たほうがよいのではないですか?」
 黙りこくったウンスに、チェ・ヨンが続けて言う。気持ちが焦っていた。ヨイン
はどうするか悩んでいるというより、しょげて泣きそうな顔になっていたからだ。
「私ったら・・・」
 聞こえたのはその呟きだけで、言葉が続かない。チェ・ヨンは黙って待っていた。
ヨインの心が決まるのを。
 しばらくして、ようやくヨインが顔を上げる。その表情には幸いなことに、思い詰
めた憂いは窺えない。
「いいわ。馬に乗ってやろうじゃない」
 多少怖じ気づいては見えるが、諾の返事に安堵する。
「では」
 心変わりせぬうちにと、さっさとウンスの背後に回り、片手で背中を押しながら
歩き出そうとする。
「ま、待って!」
 慌てたウンスが踏ん張る。その体勢のまま「何だ?」とチェ・ヨンが目で訊く。
「ふぅ・・・一つだけ教えて」
 ヨインはパッと自分から離れて向き合うと、深呼吸を一つして尋ねた。チェ・ヨ
ンは神妙な顔つきになる。
『問われれば何でも正直に、包み隠さず答える。嘘をつくつもりもない』
 ヨインの真剣な面持ちを前に、チェ・ヨンは内心そう覚悟していた。
「はい」
「ねえ、大丈夫?」
「・・・何が、ですか?」
 質問が漠然としていて即答できない。チェ・ヨンは戸惑って訊き返す。
「だから、身体は大丈夫なの?傷の様子を見たいんだけど」
 ようやく合点がいった。出発前にもそう言われて断ったことを思い出した。
「大丈夫です」
 もう一度同じ答えを口にする。傷の周りは既に再生を始めていた。ヨインが予め縫
い合わせてくれていることもあってか、内功での治癒に慣れた自身でも驚くほど、猛
烈な勢いで新しい肉が生まれている。傷はもう診てもらう必要などない。
 ヨインがチェ・ヨンをじっと見つめる。
「わかった。なら、いいの。行きましょ」
 そう言って、卓の上にあった包みを手に提げると、スタスタとチェ・ヨンの横を
通り過ぎる。チェ・ヨンは彼女の後ろをついて歩く。
 ヨインを見つけたチュホンが「ブルルン」と嬉しそうな声を上げる。チュホンは
ヨインのことを気に入っているらしい。ヨインは二、三歩後ずさっているので、両想
いではないが。ヨインがチュホンらに隠すように持っている包みが気になった。
見当はついたが、念のため訊いてみる。
「それは何ですか?」
「これ?」
 ヨインは自慢げに顔の横まで包みを掲げる。
「肉まんよ」
『それは、わかっている』
 チェ・ヨンは、目で続きを促す。
「口は重いくせに、よくしゃべる目ね。ったく。こっちはコンビニがないんだから、
お腹がすいたからって、すぐに食事にありつけないでしょ?これはお弁当よ」
 してやったりの顔で笑いかけてくる。
 あ然とした。天の門へどうやって行くのか考えてもいなかったのに、道中の空腹
の備えはしていただと?妙な可笑しさがこみ上げてくるのを、どうにか堪える。
『その逞しさに救われる』
 チェ・ヨンはヨインに感謝する。言葉にすれば、ヨインが怒りそうな気がして黙
っていた。
『行こう。カンファドに行くしかない。慶昌君ママのご容体も気にかかる。奴らは
どこまで尾いてくるのか。監視だけならば、到着した時点で離れる。離れなければ
自分が引き受ける』
 チェ・ヨンはそう決意していた。
 空は店に到着したときよりも青みが抜けてきた。もうすぐ日が暮れる。その前に
ヨインに馬を教えよう。追尾が邪魔で宿には泊まれない。野宿になること、持って
いる肉まんが今晩の夕飯になる。伝えれば、練習に身が入らぬだろうから、あえて
黙っておく。

 そのことでチェ・ヨンがウンスからブーイングを受けるのは、しばらく後のこと。

<おわり>

仕上げるのにものすごく時間かかっちゃいました(汗)
途中の内容はドラマのセリフをそのまま使っています。
実はここ、自分でやり直そうか、それとも省いて書こうかと試行錯誤。
結局そのまま使うことにしました。

省いてもアレンジしてもなんかしっくりこなくて・・
ここでけっこう時間使っちゃいましたね。
(しかも途中の下書きをアップして、変な汗が出たりとハプニングもありました)

とりあえずはアップして、今後の予定とかはまた別の記事で・・・

8/8
何でしょうねぇ・・・
きっかけは小さなことだったんです。
「あ、ここ。なんか変な文章」
で、ささっと直して再アップするはずが・・・日を置いてまた見直すと
アラが目立つ目立つ(汗)
あそこも直して、ここも直して、これは削除して、ここは書き足して・・・
けっこう直しました。
直しちゃいました。
そっと再アップしておきます。


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