開京想曲(紅楼夢番外)07 マンボ兄妹

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朝の空は晴れ渡っていた。

市が立ち並ぶケギョンの主な通りは、我先にと良い品、安い品を買い求めにきた客で溢れ
返っている。広い通りはまだましなほうで狭い通りとなると、行き交う人々が肩をぶつけて
通らなければならないほどのにぎわいだ。
そんな狭い通りを、背の高い男が歩いていた。髷は結わずに後ろで一つに束ねており、
口元と顎には無精ひげが生えている。身なりは小ざっぱりしているものの、くたびれた感じ
は否めない。男は、腕を組んでゆっくりと歩きながら、時折思い出したように屋台のほうに
目を向けるが、これといって興味を引くものはなさそうに、そのまま通り過ぎていく。
通りの活気と明らかに異なる男の歩みは、ともすれば忙しない人々の迷惑になりそうなもの
だが、誰も気に留めてなどいない。男は前を通り過ぎる者の、或いは後ろから追い越す者の
気配と動きを読み、巧く躱しながら歩いていた。躱し方も、そうとわからぬ素振りで避けている
せいで、至極当たり前に人波に溶け込んでいた。
と、粗末な身なりをした子供が一人、脇の路地から出てくると、男の前をさっと横切ってその
まま真っ直ぐ反対の路地へと入っていった。七つにはまだ届いていないだろうその子もまた、
男よりは拙いながらも人の波をうまくすり抜けていた。
男はスッと身体の向きを変えると、子供の後を追って路地へと入る。子供は背後を気にする
ことなく、入り組んだ細い路地を右へ左へと折れ曲がりながら、すたすたと歩き続ける。
やがて、一軒の家の門前で子供が立ち止まった。けれど、直ぐにまた歩き出すと、その家の
すぐ脇の小路へと入っていく。男はそれまでのように子供の後を追わず、そのまま家の門を
くぐった。
「オラビ(오라비:兄さん)、久しぶり」
家の庭先で待ち構えていた若い女が男に声を掛けた。
「新しい根城なのか?」
「どう?悪くないでしょ?」
家とその周りをぐるりと眺めたあと、男は黙って頷く。閑静過ぎず、喧噪もほどほどに聞こえて
くる。悪くなかった。
「あいつは?」
男は若い女に向き直ると尋ねる。
「もう戻ってくると思う。先に何か腹に入れておきなよ。何にも食べてないんだろ?」
「ああ」
そこへ、先ほどの子供が庭先に姿を現した。
「コサ、ご苦労さん。あっちに虫養いの餅があるから、食べて帰りな」
女が声をかけると、コサと呼ばれた子供は緊張していた表情を緩め、軽く頭を下げると
建屋の陰に消えていった。
「オラビが通りを歩いてるって聞いて、あの子に呼びに行かせたんだ」
男は一度出かけると、しばらくの間戻ってくることはない。屋敷はあるが、そこで男が過ごす
のは一年の内でふた月もあればいい方だった。
男は、ケギョンに戻ってくると、のんびりと市場を歩くことにしている。報せることがあれば、
その際に向こうから何かしらの合図がある。逆に、男のほうに会う用向きが出来た場合には、
予めもらっている印を薬売りの前を通る際にちらつかせることにしている。
それが男と手裏房(スリバン)が会う際の約束事だった。
マンボとその妹コンジャが束ねるスリバンは、同じ所に留まることをしない。ケギョンの街を
転々と根城を変えて暮らしている。先ほど、コサは男の前を横切った際に他の者には見えぬ
よう、男にだけスリバンの印を見せた。それで男はここまでやってきたのだ。
男は、覚えのある気配に後ろを振り向く。ほどなく、がっしりした肉付きのいい男が、門をくぐって
入ってきた。
「サヒョン!」
「マンボ。元気そうだな」
血色のいい、というよりも少し酒焼けしている弟分に男が笑顔を向ける。
「ヒョンも元気そうでなによりだ」
マンボは、嬉しそうに男の身体を触りながら、どこか悪いところはないかとざっと確かめる。
「サヒョン、痩せたか?」
「少しな。それよりも、何かあったのか?」
我に返ったマンボが、急に慌てた顔つきになる。
「あのよぉ、サヒョン。もっと早く知らせたかったんだが・・・サヒョンのホンサム(紅参)が、今
ケギョンにいるんだ」

<つづく>
週二更新を目指して四苦八苦。
昨日アップするつもりが、内容を見直していたら今日のこんな時間(-_-;)

日々更新されている方の爪の垢を煎じて飲んだら、週三回ぐらいは更新できるかしらん。
(こんな要らぬことを考えてまた時間が過ぎていく・・・)

マンボ妹のコンジャという名前は「孔雀:コンジャク:공작」からつけました。
コサは、ドラマでいうところの「白い人」ですが、名前は台本にあっただけでドラマの中では
名前で呼ばれていなかったと思います。⇒記憶が曖昧です。違っていたら教えて下さいませ。
マンボ妹も白い人も、二次を書かれる方が各々の呼び方や名前をつけてあげればよいのだと
思い、名前をつけてみました。

人の波をうまくすり抜ける。
そんな練習をするボクシングの漫画を読んだことがあります。(タイトルとか忘れた)
それでちょっと書いてみました。

≪このお話の主な登場人物≫
 ★マークは「信義」のドラマか小説に登場していたキャラ
 〇マークは私が設定したキャラ

○ソルソン(雪松)
「紅楼夢」では、妓楼ソガン亭の主メヒャン(梅香)として登場。
 カンファドの宿屋を営む夫婦の一人娘。
 八歳でサンホと婚姻した。

○サンホ
 ホンサム(紅参:高麗人参)を取り扱う問屋の長男。
 十二歳でソルソンを娶る。

○ミヨン
 ソルソンの母。

○タンジ
 ソルソンの父。
 カンファドで宿屋をいくつか営んでいる。

★マンボ
 表向きは「マンボの薬売り」。裏の顔は、ケギョンの情報を掌握しているという
 噂の手裏房(スリバン)の頭目。

★コンジャ(→名前は私が勝手につけています)
 マンボの妹。
 兄の右腕としてスリバンを支える。

★コサ(白い人)→名前だけは台本に載っていた。
 スリバンの一味。
 幼少の頃からスリバンに属していた(という私が考えた設定)
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