【シンイで年越し企画2015】紅楼夢 33

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「あっ」
ガチャン!
どんっ

その声と物音で、ヨンスは我に返る。
三年前のあの日から、妓楼の内廊下へ。
たちまちに心は引き戻される。顔を上げて気を引き締めると、妓楼の間取りを頭に思い浮かべてみる。
聞こえてきた音に曇りがなかったことから、使用人たちが行き来する奥廊下で物音がしたのではないかと
推し量る。
「もうっ、ハナ!」
「・・・ごめん、ミナ」
物音に続いて、二人の若い女の声が聞こえた。やはり、声は近くで聞こえる。己が立っている場所から
二丈(約六メートル)も離れてはいない。この部屋を出て右に曲がった内廊下の突き当たり、奥廊下と交差した
辺りに二人は居るのだろう。
手燭は持っていないのか、それとも先ほどの物音で消えたのか、そちらに煌々とした灯りの気はない。
「おい」
と、背後から声がかかる。
「どうかしたのか?」
扉の障子越しに、ヒョンが尋ねてきた。
「店の者が粗相をしたようです。何かあれば声をかけます」
振り向いて小声でそう答えると、「頼んだ」と一言だけ返ってきた。
まもなく、慌てた足音が三つ近づいてきて女たちがいる場所で止まる。足音は三つとも軽い。女ばかりのようだ。
「気をつけて。水差しを割ってしまったわ」
やってきた者たちに、ミナという若い女が注意を促す。
「大丈夫よ。灯りを持ってきたから。何があったの?」
「この子がいきなり抱きついてきて」
誰かが破片でも拾っているのだろうか。カシャン、カシャンと途切れがちに音が聞こえてくる。
「ごめん、ミナ。だって、だって・・・何か柔らかいものを踏んだのよ。ぐにゃって・・・それでびっくりしちゃって・・・」
しばらくしんと静まりかえる。
「トンニョン、灯りをこっちに向けて」
「ヘミョン、何か見つけたの?」
「ねえ、ハナ。このぺったんこの匂い袋、あんたのじゃ?」
「・・・あ」
気の抜けた声がした。
事は収まったらしい。
そう判断して視線を戻そうとしたヨンスの耳が、不意に聞き覚えのある声を拾う。
「破片は大体拾ったわ。ミナ、怪我はない?ハナも大丈夫?」

「平気よ。ありがとう。お尻がちょっと痛いだけよ」
尻餅をついた尻をさすりながらミナが答える。
「ごめん、ミナ。さすろうか?」
「結構よ」
邪険に返すと、ハナはたちまちしょぼんとする。泣き出すのではないか。そんな風にミナが思い始めたとき、
俯いて傷心の境地だったはずのハナがぱあっとにこやかに顔を上げる。
「ね、見て!これをこうやって・・・ほら、元通りになったでしょ?!」
ぺったんこになった匂い袋を手で揉んで形を整えると、それを手に乗せて見せる。
「・・・そりゃ、よかったわね」
呆れたミナはそう答えるのが精一杯で、他の三人は苦笑するしかない。
と、トンニョンが手燭を持つ右手をゆっくりとヘミョンの方へと向ける。そちらで、何かが動いた気がした。
灯りはヘミョンの背後に立つ、一人の男を照らし出す。
ヘミョンは振り向いて、「きゃっ」と驚きの声を上げると、後ろに退いて男と距離をとる。男は整った顔立ちを
していたが、灯りに照らし出されたその表情は険しかった。
ヘミョンの隣に立っていたホンイも、驚いて後ずさりしようとした。すると、男がすっと手を伸ばしてきてホンイの
腕を掴み、離れることを許さない。じっと見つめる男の視線を受け止めたホンイは、逃げることも忘れて石の
ように固まる。
そのとき、奥廊下の向こうから近づいてくる足音が聞こえた。
「メヒャン様!」
ヘミョンが気づいて声を上げる。
「貴女たち、一体どうしてここに?」
メヒャンが驚きの声を上げると、四人が一斉にメヒャンに群がる。
「あの、ごめんなさい。お水をもらいに行こうとして・・・」
「ハナ、それは後で。それよりも、ホンイが・・・」
トンニョンが目配せをする。奥廊下の壁が死角になってよく見えない。メヒャンは前につと歩み出る。
「!」

ヨンスがいない。
トルベが外の気配に気づくと同時に、小さな悲鳴が聞こえた。視線を上げて目配せすると、トクマンたちも頷く。
一斉に立ち上がって、トルベを先頭にして部屋を出る。やはり、部屋の外にヨンスの姿はなかった。薄暗い廊下に出て、
警戒しながら突き当たりまで進むと、右手に灯りとヨンスの後ろ姿が見えた。妓楼の主メヒャンと、若い女が一、二、三、四、五人。忍ばせた得物の位置を確認しながらそちらに近づくと、女たちはさっと主の後ろに下がった。
ヨンスの背後から回って見てみると、ヨンスが女を一人掴まえていた。
「おい。どうした?」
理由を訊いているというのに、ヨンスは見向きもしない。
「おいっ!」
トルベが声を張り上げると、ヨンスがようやくこちらにを見た。我に返ったのか、女を引き寄せていた手を緩めた。
それでも離すことはない。不思議なことに女のほうも、掴まれた腕を振りほどくことはなかった。
「私の・・・許婚です。なぜここに居るのかはわかりませんが・・・私の許婚、ホンイです」
ヨンスの表情が戸惑いの色に変わる。それを聞いた途端、女の目からは涙がポロポロと零れ落ちた。
「・・・えっ?」
『お前の許婚がなぜ妓楼にいるのだ?いや、待て。ここは妓楼ではないとテジャンは仰っていた。ということは・・・
どういうことだ?』

トルベの背後で様子を見守っていたウダルチもお互いに顔を見合わせる。
「なんだ?」
「ヨンスの許婚だと?」
「あいつ、許婚がいたのか?」
「お前、知ってたか?」
問いかけばかりの小声が応酬する。忙しなくやり取りしているうちに、背後への警戒は疎かになる。一番後ろに立っていた
トクマンが不意に頭を小突かれて、大仰に驚きながら振り返る。
「テ、テジャン!」
声は廊下に響き渡り、皆がこちらを向く。
「何事だ?」
問われて返事に惑う。
「それが・・・よくわからないのです。ヨンスヒョンには許婚がいて。その許婚があの方らしいのですが。でもどうしてここに
居るのかはヒョンは知らなくて、それで・・・」
語尾が口ごもる。自分が知り得ていることはそれが全てだった。すると、テジャンは後ろを振り向いて、
「だそうですが・・・」
と話す。それで初めてテジャンの後ろに女が居ることに気づく。
『医仙?』
『医仙様だよな?』
チマは華やかな装いだが、黒のモンスを被っているせいで身体の上半分が全く見えない。
「あー、なるほど。わかったわ」
聞き覚えのある声が聞こえた。
と、モンスの前を開けてウンスが顔を見せる。平素は化粧っ気のない方だけに、しっかりと入った眉墨や目元と唇の赤みに
トクマンが見とれる。
「それじゃ、後のことは私に任せて」
一番最後に現れてしたり顔でそういうウンスに、ウダルチはただぽかんとするだけだった。

<つづく>
ご無沙汰しています。
更新がないときにもお訪ねくださって有難い気持ちでいっぱいです。

妓楼の間取りはテキトーなのであまり考えないでくださいまし(^_^;)

ちょっとずつ暖かくなってきましたね。
三寒四温の「温」を感じられるようになりました。
いつも遊びに行かせて頂いている梅の画などをを見せて頂きながら、
あっという間に過ぎていく(と思われる)三月の日々を慌ただしく
過ごしていきたいとおもいます。
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