画像でSSを書こう 入り江の宿にて

ここでは、「画像でSSを書こう 入り江の宿にて」 に関する記事を紹介しています。
こちらは、シンイヨン周年期間限定ぐるっぽの企画「画像でSSを書こう」に
投稿したお話です。

加筆修正しております。

画像提供:マイルさん 画像保管庫

画像の二次加工、コピー、転載、捕獲はおやめください

巡視を終えてケギョンへと戻るウダルチの一行は、見慣れた宿に到着する。
入り江の宿は以前と変わらぬ佇まいで客を迎え入れ、どやどやと入ってきた隊員たちが
各々忙しく立ち働いていた。
亭主から酒瓶を受け取ったヨンが、それを手にフラリと外へ出ていこうとする。
「テホグン、どちらへ?」
トクマンが呼びかける。
「・・・」
聞こえたはずなのに、答えはなかった。
「誰か、供を」
「いい」
そっけなく言い残して行ってしまう。あの木のところに向かわれたのだ。トクマンは最初
そう思った。けれども、医仙がこの地にお戻りになったあとなのに?と、疑問がわいた。
気になったトクマンは急いでヨンを追いかける。見慣れた後ろ姿は、天門とは違う方向へと
歩いていく。やがて村外れの林の方へと向かっていることに気付いたトクマンは「あ・・・」と
立ち止まった。それから少し考えて踵を返すと、宿へと戻った。
トクマンは食堂の片隅で念入りに槍を手入れした。それが終わると、槍を置いて外へ出る。
陽は西の山に半分ほど沈み、見上げた空は蒼さを増していた。空から視線を戻すといつの
間にかテホグンが傍に立っていた。
「ヒョンが恋しいです」
視線を前に向けたままポツリとトクマンが言葉を漏らす。この宿に来ると、チョナをお守り
しながら戦ったときのことを思い出す。あのときはチュソク組長もトルベヒョンもいた。
口にしてしまうと余計に恋しさが増した。
「オレもだ」
並んで夕陽に視線を向けたヨンが呟く。
「友が恋しい」
思わず横を見たトクマンに、ヨンはフッと寂しげな笑みを見せる。
そうだ。あのときはその方も居られた。流れるように扇を操りながら敵の攻撃をかわして
いたチャン侍医が、トクマンの中で鮮やかによみがえる。ヨンがおもむろに、トクマンの胸に
拳をあてる。
「だが、あいつらの志はお前の中に生きている」
「はい」
「友もオレの中で生き続ける」
「・・・はい」
「先に行く。明日は早い。遅れるな」
「はい!」
ヨンを見送ったトクマンは、夕陽に再び視線を戻す。

在りし日の兵(つわもの)たちが束の間紺碧の空に見えた気がした。懐かしさに胸が震える。
だが、それはすぐに紺碧の空にとってかわった。トクマンは夕陽に向かって一礼をすると、
テホグンの後を追いかけていく。
やがて陽は沈み、空は藍の色に染まった。

****

マイルさんの画の灯篭から、「祈り」をイメージして書きました。
ヨンが行った場所。それは二度にわたる襲撃で殉死したウダルチのお墓でした。
(墓といっても土を盛っただけの簡素なイメージですが)
おまつりの時期がちょうどチュソクの頃だったので、ヨンにはお墓参りしてもらったという
わけです。

スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する