【シンイで年越し企画2015】紅楼夢 21

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 トルベは、夜半の警護を終えて兵舎に戻ったヨンスに声をかけると、そのまま兵
舎の裏庭へ伴った。ヨンスは、脱ぎ掛けていた鎧の紐を再び締め直すと、すぐに後
ろをついて歩いてきた。

 ヨンスはウダルチの中にあって自分ほど武芸に秀でているわけではないが、得物
は難なくこなせる器用者だった。おまけに頭もよく、チョナを王宮へお迎えする道
のりでは、元の言葉がよくわからぬ隊員の求めに応じて通訳をしているところを
度々見かけた。
 トルベは、最初ヨンスが嫌いだった。乙組の下から数えたほうが早い下っ端のウ
ダルチだった自分に、ようやく下の者が出来たと思って喜んだのは束の間で、配属
されてきたヨンスは愛想がなく、落ち着き払っている奴だった。
 父親が当時ウダルチと犬猿の仲(今でも仲がいいとは言えないが)だった禁軍に
所属しているのに、ウダルチに入ってきたことで、ヨンスは年嵩の連中から敬遠さ
れた。(年上のウダルチほど、禁軍にそれだけの積年の恨みがあったということだ)
 下っ端のヨンスが敬遠されたせいで、雑用はトルベのほうに回ってくるようにな
り、ある日我慢できずにヨンスに「お前のせいだ!」と怒りまくった。黙って聞い
ていたヨンスは、年上の隊員たちのもとに行くと「雑用は自分にお任せ下さい」と
言い、それから段々と皆がヨンスにも用を回すようになった。
 ヨンスが親の反対を押し切ってウダルチに入ってきたことを人づてに聞く頃には、
トルベはヨンスに対する苦手な思いも嫌悪も消えてなくなっていた。そして、ヨン
スは、今では組長である自分の頼りになる右腕として補佐してくれている。

『違うな』
 トルベは、心の中でひとりごちる。ミョンファとヨンス。二人が深い仲だとはや
はり思えなかった。禁忌を犯してまで想いを募らせるのであれば、さすがにヨンス
の異変に自分も気づくはず。
 自分とヨンスとは、そんな間柄なのだと自負したうえで、二人がそんな仲ではな
いことを確信して、トルベは振り返る。
「ヨンス」
「はい」
 いつにないトルベの真剣な眼差しに、ヨンスが身構える。
「お前、ミョンファと深い仲なのか?」
「え?」
「(ゴクリ)」
「・・・いえ、違います」
 唐突な問いに驚いて言葉に詰まったものの、ヨンスはきっぱりと否定した。自分
を見る瞳はあちこち彷徨ったりせず、真っ直ぐこちらを見返している。トルベはそ
の答えに「はあぁ~」と溜めていた息を吐く。肩にも余計な力が入っていたようで、
首を横に傾げる。ポキポキと骨の鳴る音がした。
「おい」
「・・・はい」
 顔を上げたトルベはゆっくりと腕を組むと、ヨンスを見据える。
「オレがどうしてそんなことを訊いたのか。心当たりがあるな?」
 わざと声を低めてトルベが問うと、
「・・・はい」
 と、ヨンスがきまり悪い返事をした。

<つづく>

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