【シンイで年越し企画2015】紅楼夢 18

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「テジャン、遅いですね」
 トクマンの声で、トルベは物思いから覚める。
 顔をあげると、いつの間にか皆目を開けていた。店に入るなり別れたままのテジャン
を心配している声音に、
「そりゃあ、遅くなるだろう。考えてもみろよ。テジャンは妓生になった医仙に会って
るんだ」
 トルベが心配することなど毛ほどもないとニヤリ笑う。
 テジャンは医仙に会いに来たのだ。会うことが叶わなければ、焦れたテジャンが
とっくにひと騒ぎ起こしているだろう。会えば会ったで、医仙の妓生姿に目がくら
んで、話どころではないだろう。お二人の傍に長く仕えていれば、自ずとわかることだ。
 同意を求めて皆を見るが、なぜか呆れた顔をされる。
「おい。命が惜しいなら、その頭の中の絵図を今すぐ墨で塗りつぶせ」
 同い年のウンソプがたしなめる。チョモとトクマンも「やれやれ、まったく」と
首を振る。どうやら、組んず解れつの絵図を頭に思い浮かべていたと思われたらしい。
日頃の行いがよろしくない所以だった。
「おい、オレはだな・・・」
「(グーキュルルル)」
 トクマンの腹の音が、トルベの反論を絶妙の間合いで遮る。隣に座っていたら一
発頭をペシンと叩いているところだが、トクマンは末席に座っていて手が届かない。
申し訳なさそうに首をすくめるので、ぶん殴る真似だけにしておく。
「喋ると腹が減る。黙ってテジャンを待とう」
 「誰が最初に口を開いたのだ」という視線が矢になって飛んでくる前に、トルベ
はさっと瞼を閉じる。
 軽口を言い合うほど、この場所は殺気とは縁遠い。気を研ぎ澄ませても、怪しい
物音や気配は感じられない。それでも、テジャンが来るまでは神経の糸を適度に張って
おくことを忘れない。
 今頃テジャンは、オレたちを呼んだ理由を医仙から伺っていることだろう。ひと
働きするならば、その前に飯を食っておきたいものだ。再び腹の虫が鳴るのをなだ
めすかしながら思っていた。
『そうだ』
 ふと気になって薄目を開け、隣のヨンスを窺う。
 話の輪にも入らず、先ほどから押し黙ったままのヨンスに気づく。振り返ってみ
れば、兵舎を出たときから浮かない顔つきだったことを思い出す。ヨンスは、深く
考えこんでいるらしく、こちらの視線に全く気づかない。思い悩むその横顔はテジ
ャン、そして自分の次に女たちが振り返るほどの端正な造りをしていた。
『・・・ヨンス』

 トルベは、ヨンスの沈鬱の理由を知っていた。


<つづく>

また後日~
ウダルチを長い間放置していたので、罪滅ぼしのために
登場シーンが多めです(笑)
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