【シンイで年越し企画2015】紅楼夢 6

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彼女は、コ・ホンイと名乗った。

 ウンスは、メヒャンの隣に座ったホンイを見つめる。先ほどのホンイは、ず
いぶんと感情が昂ぶっていたようだったが、今は落ち着いた様子でウンスと卓
を挟んでいる。
 もっとも、そう装っているだけで、心の中では感情の波が荒れ狂っているの
かもしれない。ホンイは、手に提げていた紅色の風呂敷包みを膝の上に載せて
いて、その結び目を命綱のように両手でぎゅっと握りしめていた。
 ウンスは、ホンイが口を開くのを待っていた。ホンイは、一旦は意を決した
ように顔を上げたものの、語り始めるまでには及ばず、諦めて頭を垂れた。そ
んなホンイに、メヒャンが先に優しく声をかける。
「ホンイ」
 名を呼ばれてようやく顔を上げる。メヒャンを見つめると、膝に置いた風呂
敷包みに視線を落とす。そうして、包みをぎこちなく撫でたあと、その包みを
卓の上に置いて、ウンスの方に差し出す。
「医仙様。この包みを兄様(あにさま)にお渡し下さいませんか」
 その声は、多少震えてはいるけれど、ちゃんとウンスの耳に届いた。
「この包みを?」
「はい。中には、兄様から頂いたものが入っております。私の代わりに、兄様
に返して頂きたいのです」
「中身は何?ううん、ちょっと待って」
 ウンスは一旦会話を止めて、メヒャンの方を見る。この流れでは、包みを預
かってキム・ヨンスに渡すということになる。そうなったら、「彼をここに呼
び出して欲しい」というメヒャンの話と食い違うのだが。
『どういうこと?』
 目で問いかけると、メヒャンは苦笑していた。ホンイがそんなことを言い出
しても驚いた様子はない。メヒャンはホンイとヨンスを会わせてやりたいと思
っているけれど、ホンイは会いたくないということだろうか。
 それなら、先ほどのホンイのあの言葉は何だったのだろう?
「ホンイさん。あなた、さっき私に「会わせて欲しい」って言ったわよね?そ
れなのにどうして?」
 その質問は予想していたらしい。
「はい。会って一言お礼を申し上げたい気持ちがございました。でも、それは
間違いでした。そんなことをすれば、兄様にご迷惑をかけてしまうかもしれま
せん。どうか、先ほどの私の言葉はお忘れ下さい」
 ホンイは先ほどとは反対に、スラスラと理由を述べた。何だか流暢に語られ
ると、その言葉を疑ってしまう自分がいた。
『どっちなんだろう?会いたいのか、会いたくないのか』
 ウンスは、ため息をつく。ホンイは忘れてくれと言ったが、会わせて欲しい
と言ったときの、彼女の切実な表情は目に焼きついてしまっている。
「ホンイ、お会いして心の区切りをつけるのではなかったのですか?そうしな
いと、前には進めませんよ」
 メヒャンが優しい声音で諭すように語りかける。ハッとして顔を強張らせた
ホンイだったが、次の瞬間には、はらはらと大粒の涙を零していた。
「怖いのです。会っても・・・私を・・・憶えてなど・・・」
 口を開いた途端、押し込めていた想いも一緒に溢れたのだろうか。途切れ途
切れにそれだけ言うと、あとは部屋にホンイの嗚咽だけが響く。メヒャンがホ
ンイの背中を優しくさすってやっているのを眺めながら、ウンスは考えていた。
 ホンイは、ヨンスに会いたいのだ。だけど、もしヨンスが自分のことを忘れ
ていたら・・・そのことを目の当たりにするのが怖いから会いたくない。メヒ
ャンは、二人で話す場を設けようとして、ホンイは尻込みしていたということか。
ようやく、ウンスも状況が飲み込める。
 ふと、卓の上にある包みに目がいく。託そうとした中身が急に気になった。
「ところで、あの包みは何ですか?」
 今はホンイに訊けないので、メヒャンに尋ねる。
「文箱です。中に入っているのは、ヨンス様とこの子のホンソ(婚書:혼서)です」
「えっと・・・つまり・・・」
 びっくりして内容がすんなりと頭に入って来ない。鳩が豆鉄砲を食らった
ような顔のウンスに、メヒャンが「ええ」と微笑む。
「ホンイはヨンス様の許婚です」

<つづく>

ホンイとメヒャン。
オリジナルのキャラにすっかり振り回されております。

「もののけ姫」で、アシタカが村を出なければならなくなったときに
別れをいいにくる女の子カヤが、彼のことを「兄様(あにさま)」と
呼んでいました。
彼女はアシタカの許婚(いいなずけ)だったそうです。
それを真似て、ホンイにはヨンスのことをそう呼ばせてみました。

次回はもうちょっと早くアップできますように・・・(我が事なのに神頼み)
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