【シンイで年越し企画2015】紅楼夢 3

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 ヨンがメヒャンに案内されたのは、建屋の端に位置した部屋だった。
「こちらへどうぞ」
 促されて部屋に入ろうとしたヨンが戸口で一瞬固まる。躊躇しているヨンを見てメヒャン
が察した。
「ご所望の妓生ファンウォルが、この部屋にテジャン殿をお通しするようにと・・・」
 と、言い添える。ヨンはメヒャンをじっと見つめる。嘘があれば目が泳ぎ、取り繕う様を見
せる。真であれば、相手は真っ直ぐに見つめ返してくる。真偽を確かめるとき、確かめた
いとき、ヨンはいつもそうしていた。
 ヨンの視線を受け止めてしばらくぼんやりしていたメヒャンは、我に返って笑顔で見つめ
返してきた。
「美丈夫な方に、そんな風に見つめられますと落ち着きませんわ。こちらのお部屋は少し
窮屈にお感じになるかもしれませんが、ファンウォルが「部屋が小さいほうが暖かいから」と
気に入っておりまして。別のお部屋をご用意致しましょうか?」
 ヨンはもう一度部屋を見る。
『あの方が言いそうなことだ。この部屋をそんな理由で選んだとは・・・。それに、妓名まで
つけたのか?』
 こちらの心配をよそに、何やら妓楼で楽しくやっている雰囲気も窺えてきた。ヨンはため
息を押し殺して、仕方なく一歩だけ足を踏みいれる。メヒャンは扉の傍で立ち尽くすヨンを、
それ以上促すことはなかった。
「ファンウォルを呼んで参ります。しばらくお待ちくださいませ」
 メヒャンがそう言い残して出ていったのは、しばらく前のことだ。ヨンは戸口近くの壁にも
たれかかったまま、ある場所をわざと避けて、視線を巡らせる。
 部屋は落ち着いた色合いの壁や柱で設えてあり、調度品は華美ではないものの、一つ
一つよく見ると、手の込んだものが置いてある。そうやって、あえて目を逸らすようにして
いても、どうしても視界に入るものが部屋の奥にはあった。
 部屋の造りが狭いので、奥と言っても歩いて五歩で到達できるほどのところに、大きな
寝台が置かれていた。寝台の帳(とばり)は半分ほど開いており、躑躅(つつじ)色の布団
が垣間見える。
 寝台が部屋の半分近くを占めるため、ここが房事のための空間であることを見せつけら
れているようで、どうにも居心地が悪い。こんな状況に置かれて、ため息が出そうだ。今
度は堪えることなくため息をついたつもりだったが、吐息はほとんど出なかった。
 そこで初めて、自分が思ったよりも緊張していることを自覚する。顔を上げると、寝台が
目に飛び込む位置に立っている。けれど、この狭さではどこにいても寝台が目に入ってし
まう。気が緩むと、あられもないことを思い浮かべそうになる。
 いっそ、寝台に背を向けて立てばよいのかとも思った。それで、あの方が部屋に入って
きたとき、そうして立っている自分を思い浮かべて、
「お前は馬鹿か」
 という悪態が口をついて出た。あの方の視界に、自分と寝台が一緒になって映るでは
ないか。それでは、まるで誘(いざな)っているようにも見える。要らぬことばかり考える自
分に嫌気がさした頃、ようやく目を開けているからこんなことを考えるのだと、はたと気づいた。
 ヨンは咳払いを一つして、ばつの悪い顔を引き締める。そうして、壁にもたれかかったまま、
目を閉じて待つことにした。

<つづく>

妓楼のソガン亭という名前ですが、わざと変えてあります。
韓国語では松の木を「ソナム소나무」といいます。
でも、松という漢字を韓国語で表現する際は「송ソン」と表します。
なので本当はソガン亭ではなく、ソンガン亭なんですが・・・
ちょっとした思い入れがあり、ソガン亭にしちゃった、というお話でした。
ちなみにケギョンは松の木が多く植わっていたそうです。
なので、別名「松都ソンド송도」とも呼ばれたそうで・・・

次回は時間をさかのぼって、ソガン亭に来る前の様子を書くことにします。
師叔のことをすっかり忘れておりました(汗)
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