乙女だらけのクリパ企画 「同じセリフでお話を書こう」より 『蒼い炎』

ここでは、「乙女だらけのクリパ企画 「同じセリフでお話を書こう」より 『蒼い炎』」 に関する記事を紹介しています。
このお話は「乙女だらけのクリスマスParty♥信義」にて、
【同じセリフでお話を書こう】という企画にアップしたものです。

 ※脱字を修正したのみで、それ以外の内容は同じです。

お題は、こちら
『粉雪が頬に舞い降りた。溶けた雫が涙のように流れ落ちた。』

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『蒼い炎』

陽が暮れる少し前から粉雪が舞い始めた。
ふと、目の端に赤いものが映る。
回廊を歩いていた天音子ユチョンは立ち止ってそちらに足を向ける。

それは、滑るように庭の植木を避けて通り慣れた道なき道を進み、
やがて屋敷を取り囲む門の塀に突き当たると、身体を少しかがめた。
『跳ぶ』
思った瞬間、声をかけていた。
「モビリョン」
呼ばれた火手印は、体勢を戻してゆっくりと振り向く。にっこりと
口の端を上げて笑う顔に、ユチョンは息が詰まる。

『どこに行く?何をしに行くつもりだ?』
聞かなくてもわかっている。それでも聞かずにはいられない。
「どこに行く?」
束の間でもいい、時を稼ぎたい。
雪が本格的に降り出せば、往来の人通りはまばらになるだろう。
そうすれば、モビリョンが求める人肌も、今宵は得られぬかもしれない。

ユチョンの思惑など手に取るようにわかる。
モビリョンは、沸きあがる衝動を抑えられない自分をなだめてやりながら
じっとユチョンを見つめた。

粉雪がモビリョンの火照った頬に舞い降りた。
溶けた雫が涙のように流れ落ちた。

それが涙ではないことぐらい、ユチョンは百も承知だった。
「ごめん」
つぶやくように言うと、モビリョンは猫のようにしなやかな動作で
塀の向こうに跳んで消えた

そんな気持ちが、一体お前の中にどれほどあるのか、
お前を裂いて、欠片でもいいから見つけたい。

こみあげる怒りをぶつける先もなく、曇天の空を仰ぎみる。
白い粉雪は次から次へと舞い降りてくる。
粉雪がユチョンの頬に舞い降りた。溶けた雫が涙のように流れ落ちた。

『降れ、降れ、もっと降れ』
雪で獲物が見つかることのないよう。
落胆して自分の懐に戻ってくるよう。

やがて、雪に濡れた身体が氷のように冷たくなってくる。

『このまま心も凍りついてしまえばいい』
叶うことなどない願いを胸に、ユチョンはその場に立ち尽くしていた。

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