03 カンファドへ その1 【シンイで年越し企画】

ここでは、「03 カンファドへ その1 【シンイで年越し企画】」 に関する記事を紹介しています。
この記事は、りえさんの「シンイで年越し!」企画に参加しています。

テーマは・・・自由(あえて当てはめるなら「恋人未満」かな?)
ヨンたちがキ・チョルの屋敷を出てカンファドへ向かう道のりのお話です。

続きをもう少し書きたかったのですが、残念ながら時間切れになりましたので
後日この続きをアップしたいと思います。
(台本の訳をアップしてからになるので、1か月以上先になるかも・・・)

06_カンファド1

 屋敷を出てすぐに気配を感じる。そのまましばらく歩いてから振り向いて、ヨイン(女
人)越しに、一番後ろで馬を引いているテマンを見やる。
 テマンは少し俯いて、鋭い目つきで周囲を警戒していた。視線に気づいて顔を上げ、目
で問いかけてくる。
『何もするな』
 わずかに首を振ってそう答えると、前に向き直る。一定の距離を置いて、付かず離れず
尾いてくる。同行しない代わりに見張りをつけたのだろうと今は判断しておく。
 気配で探った追尾の数は多い。見張りであれば五、六人で十分だが、背後の敵は十を超
える。足の運びから見て単なる私兵ではなく、軽功並みの身の軽さを持つ精鋭たちのよう
だ。奴らが徳城府院君からどんな指令を受けているのか・・・それを知る術はない。
<行くしかない>
 王の元には戻らない。ヨインを連れて戻ったとしても、奴は「医仙を引き渡せ」と再び
王に迫るだろう。そして、王はその要求を拒むことが出来ない。今度はオレの目の前で、
ヨインが引きずられて行くことになる。
 王宮以外に逃げたとしても、いずれ見つかり、やはり同じ運命を辿るだろう。ヨインを
天界に帰して一人で王の元に戻り、その責めを一人で負うことも考えた。だが、天の門が
開いていないのでは、それもままならない。
<今は、奴の意のままに動くしかない>
 チェ・ヨンは両手の拳をグッと握って力を込める。
<行くしか道はない。だが・・・>
 チェ・ヨンは深刻な面持ちで黙々と歩を進める。

 おっかない屋敷を出てしばらく行くと、前を歩く男が振り向いた。視線は自分を越えて
馬を引いているくせっ毛の子に向かい、その視線を追いかけてウンスも振り向く。
 その子は顔を上げたが、何も言わない。その顔がちょっと強張っていて、緊張している
ようにも見えた。
 二人はアイコンタクトで会話したらしい。くせっ毛の子は頷いて張りつめていた表情を
和らげ、男は再び歩き始める。
<何?何の話?>
 一人だけ蚊帳の外でちょっとむくれたが、気を取り直す。話は終わったようなので、ウ
ンスは前を歩く男に追いつき、並んで歩きながら話しかける。
「ねえ、誰も見てないんだし、このまま逃げない?」
真っ直ぐ前を向いたまま顔を合わせることなく男が問い返す。
「行くとおっしゃったのでは?」
「あ~。あれは、あそこから出るためにそう言ったのよ。カンファドになんか行くつもり
 ないわ。契約書にサインしたわけでもないし。あんな口約束、破っても問題ないでしょ?」
 治療に失敗したら首を刎ねられるっていうのは現実味がなくて、タチの悪い冗談としか
思えない。本気にしたわけじゃないけど、危ない橋なんか渡らないわよ。絶対に行くもの
ですか。
「ハンコもついてないわよ」
 印を押すジェスチャーをしながら、茶目っ気を見せてノリで彼を頷かせようとする。
 すると、男がいきなり立ち止まる。並んで歩いていたウンスも、それに気づいて何歩か
行き過ぎてから立ち止まる。男は俯いて額に手を当てている。
<熱でも出たのかしら?>
そして吐息を一つ吐く。
<あ、今ため息ついた>
男はウンスとさっと視線を合わせて、
「行くしかありません」
 にべもなくそれだけ言うと、この話は終わったと言わんばかりに再びすたすたと歩き出
す。納得できないウンスはそのまま立ちつくす。
 その直後に「ブルルン」という声が耳のすぐ後ろで聞こえて「わっ!」と驚く。振り向
くと、くせっ毛の子が二頭の馬を連れて真後ろに立っていて、ウンスは慌てて飛び退く。
 障害物がなくなったテマンと馬二頭はいそいそと前を行く男を追うが、ウンスはその場
からまだ動けない。
<何よ。「馬に乗らない」ってごねたから、話をするのもイヤなの?>
道の真ん中で腕を組んで仁王立ちする。怒っていることをアピールしてみせるが、肝心の
相手が振り向きもしないのだから効果はない。
「はぁ~っ」大きなため息を一つ吐き出してから、ウンスは渋々歩き出す。
<絶対に行かないほうがいいに決まってる。行きたくない>
 それでも、この世界で自分を守ってくれる唯一の人が「行く」っていうなら、行くしか
ない・・・圧倒的にこっちが不利じゃない、ったく。
<でも、ぜーったいに馬には乗らないわよ!一つ譲ってあげたんだから、これだけは絶対
 に譲ったりしないわ!>
 今度はずんずんと、鼻息も荒く大股歩きで彼の背中を追いかける。

 馬を引きながら、テマンがおずおずと尋ねる。
「いいんですか?」
「何を?」
「奴らのこと」
「いい」
 歩みを緩めてヨインが追いつくのを待つ。
 言う必要はない。知れば不安にさせるだけだ。この下界の理(ことわり)を全く知ろう
ともせず、こちらの言うことを全く聞いて下さらないのには閉口する。
 けれど、あの明るいヨインの顔が不安に曇ったり、暗く翳るのは見たくなかった。

 ウンスの歩みがあまりに遅いので、いっそのこと「敵がすぐ後ろにいる」とチェ・ヨン
がぶちまけたくなるのは、これからしばらく後のことである。

<つづく>
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コメント
この記事へのコメント
おはようございます。

>オリーブさんの文章がソン ジナさんの調子に沿っているように思いました。ソン ジナさんがどういう方かわかりませんが、文章や捉え方からするとオリーブさんと似ていてラブロマンスが苦手で、観念が勝っているように感じました。

翻訳している影響もありますが、意識的にドラマのチェ・ヨンやウンスに合わせるようにしています。
二次小説とはいえ、今はドラマの流れに沿った内容を書いているので、私の二次小説の記事を読んだあとに
ドラマを見ても不自然な感じを受けないようにと思って書いています。

なので、ずーっと後で、ドラマの流れとは関係のないものを書こうとしたとき・・・どう書いていいのか
わからなくなってしまうんじゃないかと心配です(笑)

でも、もしかしたらソン・ジナさんもラブシーンは苦手なのかしら?
他の作品はあまりよく知らないのですが、社会派ドラマのイメージがあります。
ラブストーリーをよく書く脚本家さんというイメージがあまりしないような・・・

> 信義は、監督が遺作として残してくれた作品です。あの映像は、褪せる事無く輝き残っていくのでしょう。でもねえオリーブさん それは韓国で残るとは限らないと思いませんか?

本国でウケなかったものが別の国でウケる。
ということもありますものね。
別の国で大きな話題に取り上げられることにより、本国で評価が見直されるというのは
あると思います。
ここはひとつ、日本で「信義」の草の根運動を展開し、それが韓国で話題に取り上げられて
ソン・ジナ女史やキム・ジョンハク監督をはじめとする「信義」に携わった方々の再評価に
つながってくれれば・・・と思っています。

2015/01/26(月) 05:50 | URL | おりーぶ #-[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015/01/24(土) 10:45 | | #[ 編集]
あけましておめでとうございます♪
あ、そうですね。
陰暦では2/19ですから、やっと暮れが迫ってきたというところでしょうね。
(韓国ではソルラル、中国では春節というのですね。さっき調べてきました)

ボストンは寒かったのですね。
確かに・・・冬は寒い街のイメージがあるところです。
(どんよりと曇った空が多いイメージが勝手にできています)
ちなみに日本は12月よりも暖かい日が多かったような気がします。

> オリーブさん、外に出る時は、毛語録、コーラン、聖書、何度も何度も読み直して行きました。
> その言葉その思想の中でしか相手に通じない事が多いのです。
本当におっしゃる通りです。
その国の方々が長い間大事になさってきた思想なのですから、こちらはその考えを尊重し、
耳を傾けることで相手も柔和になって道が模索できるのだと思います。
ma2008さんが、相手の方とわかりあおうとして彼の国の歌、詩、民話などを話題に出して
いらっしゃるからこそ、その気持ちをくみとった相手の方が和んだのでしょう。

私は「モノに命は宿る」と信じていますし、八百万の神々も信じています。
仏様も場合によってはすがったりしています。
(結局ひっくるめて大雑把に「神様」というカテゴリーなんですが)
その考えを頭ごなしに否定されたり、バカにされたり、聞く耳をもたない態度をとられると
哀しくなりますし、こちらも頑なになります。

ヴェトナムでの大会のお話・・・
彼の国の方々は、どうしても自国が優位に立ちたいという姿勢があり、
慮るということがないですね。
どうしましょうね。(ため息しか出ません)

人質の方はお子様も生まれたばかりだとか・・・
無事の解放を祈るのみです。

2015/01/24(土) 07:45 | URL | おりーぶ #-[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015/01/23(金) 18:13 | | #[ 編集]
はじめまして♪

> 大晦日は素敵なお話しを、ありがとうございました。
> まるでソン・ジナさんが書いた小説を読んでるようで、、嬉しかったです!
きゃあ~ すごく嬉しいです。
それって最高の褒め言葉じゃないですか~(照れ照れ)

> 実は少し前から二次の読み手から書き手になりまして。
私も最近書き始めました。
楽しいですよね、書くことって。
ドラマのあらすじや資料などが書くことに役立っているとのこと。
とても嬉しいです。
それでこそブログにアップした甲斐があるってもんですから。

更新はのんびりしていますが、またお立ち寄りくださいナ
2015/01/04(日) 13:04 | URL | おりーぶ #-[ 編集]
はじめまして。
大晦日は素敵なお話しを、ありがとうございました。
まるでソン・ジナさんが書いた小説を読んでるようで、、嬉しかったです!
実は少し前から二次の読み手から書き手になりまして。
書くにあたって、ドラマよりもこちらを何度も拝見しに来ています。
膨大なドラマのあらすじと資料に、感動と感謝の気持ちで一杯です。
有難うございます!
2015/01/04(日) 12:09 | URL | シン #-[ 編集]
あけましておめでとうございます♪

> 年越し企画楽しみにしておりました!
早速読んで頂き、ありがとうございました。
まさに「歩みが遅くて」のBGMがピッタリですね♪

そして、「書くのが遅くて」なワタシです。
続きはまたしばらく先になります。
首を長くさせて申し訳ないのですが、待って頂けると幸いです。

> 別人です。
ぎゃっ(汗)
失礼しました~(汗アセ)
私の勘違いでしたね。
お忘れ下さいませ

こんな早とちりなワタシですが、今年もよろしくお願い致します(ぺこり)

2015/01/01(木) 00:39 | URL | おりーぶ #-[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014/12/31(水) 18:31 | | #[ 編集]
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