【韓国小説】ドレミファソラシド #98~100

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ふとした時にウンギュの顔が思い出されて、ウンギュの声が聞こえてきて・・・
思い出せば辛くなるだけだから、いつも忙しくして考える隙を与えないようにしていたジョンウォン
だけど、自分を縛り付けていた罪悪感という鎖が解けた喜びを感じて走り続けて。
やっとウンギュに会える、ウンギュに触れることができる、ウンギュのそばで笑っていられる。

で、勢いのとまらないジョンウォンはチェガンの学校に行って、授業を受けているナリのところに
乱入してウンギュの住所を聞き出そうとして拒否されてしまいます。
「オッパの住所をなぜ?」
「どこにいるの?ソウルのどこなの!?」
「オッパになぜ会うんですか?」
「ナリに説明する必要ないでしょ、ウンギュはどこ?」
「私もオンニに教えなきゃいけない理由はないです」
と反抗的な態度で(笑)
じゃあもういいと言ってドラムのオンニのところへ向かおうとしたジョンウォン。
「オッパを困らせるようなことはやめてください。そっとしておいて下さい」
というナリの声を無視!

チェガンの学校を出たところでジョンウォンはずっと持ってたペンダント2つとウンギュにもらった
小さなナイフと千ウォン札をぎゅっと握って・・・
「あたしが会いに行くことはウンギュを困らせることになるって?」
ナリの言ったことなんか話にならないとばかりに笑って、ドラムのソヒョンオンニのところへと
行ったジョンウォン。
ソヒョンオンニはジョンウォンからヒウォンのオンマが戻ってきたことを聞いて、ウンギュに会いに
いけるというジョンウォンの言葉に心から喜んでくれます。
で、ウンギュの家の住所を書いたメモを渡してくれるんだけど・・・住所はスウォンとなってて。
いぶかしんでるジョンウォンにソヒョンオンニが説明してくれます。
「ウンギュはソウルにいないんだよ、ジョンウォン」
「ソウルにいるって言ってたのに・・・」
「あれは全部嘘なんだ。歌手デビューするって言ったことも。
 ジョンウォンに向き合う自信がない、ジョンウォンのすぐ近くにいるのに忘れる自信がないって。
 それで一人でソウルを離れることにしたんだよ。高校も転校して、卒業してからはスウォンの大学
 に入ってた。
 あたしが時々スウォンまで会いに行ってた。あたしにはすごく明るいフリしてるのがわかった。
 何年も一緒にバンドやってたから無理してるのはすぐわかる。笑顔が痛々しくて何も言えなかった」

何にも知らなかった自分がすごく情けない。ソヒョンオンニの話を思い出しながら一人でバスに
乗ってウンギュの暮らすスウォンへと向かうジョンウォン。
見慣れない風景を車窓から眺めながら、
「ウンギュが住んでるところ・・・全てを諦めて離れていったウンギュの家があるところ」
とつぶやくジョンウォン。
バスの座席でペンダントを出して二つを並べて。

『ウンギュとジョンウォンはウンギュが言った通りに、海へ連れて行ったし、一日に20回以上も
 キスさせて、毎日同じふとんで寝るようにして、ずっとずっと一緒にいるようにした。
 これからは一緒に泣いて一緒に笑える、このペンダントのウンギュとジョンウォンのように、
 あたしたちも毎日毎日ピッタリくっついていようね』
と思いにふけるジョンウォン。

ソヒョンオンニに教えてもらった停留所で下りて、ウンギュが住むワンルームマンションの部屋の前
で何度もためらいながら、やっと勇気を振り絞ってチャイムを鳴らしたジョンウォン。
すぐにドアは開き・・・「ウンギュ!」と勢いこんで言ったジョンウォンですが、ドアの隙間から
顔を見せたのはなんと女性。
肩までの黒い髪をぎゅっと後ろで束ねてて、目がすごくキレイな女の人。あたしより背が高いのに
ほっそりしてて・・・
自分を見ていぶかしむ女性に、
「ウンギュの家ですよね?」
と聞くジョンウォンに、コクコクと頷く女性。
『友だちだ・・・友だち・・・』
「ウンギュは中にいるんですか?」
なおも聞くジョンウォンに首を振って答えた女性は、ジョンウォンを怪しい女だと判断したらしく
いきなりドアを閉めちゃった。
ジョンウォンはウンギュに会えなくてマンションの階段に座り込んでブツブツと怒ってて。
「何よ、話にならないじゃない。あの女は友だちよ、友だち。早く帰ってこい!」
と独り言いってるところへ、ウンギュの歌声が耳に入ったジョンウォン。
明るい姿で新しい出会いを始めたかったジョンウォンは気持ちを落ち着けてから、慌ててウンギュを
追いかけます。
部屋の前でチャイムを鳴らすウンギュが目に入ったジョンウォン。
「はい」
インターフォン越しに聞こえるさっきの女性の声。
「オレ、ウンギュ!コロッケ買ってきた。チーズコロッケ!」
ドアが開いて、
「帰ってくるなりご飯の話?あ、さっき女の人が訪ねてきてた」
「??サークルの子だろう、寒い!早く中に入ろう」
バタンとドアが閉まり・・・立ちつくすジョンウォン。

『ウンギュを信じたい・・・ウンギュを信じよう、ジョンウォン!!』
ウンギュが自分以外の女と一緒に暮らしてる光景を目の当たりにして衝撃を受けたジョンウォン
だけど、勇気をふりしぼってちゃんと確認しようともう一度さっきの部屋に行きます。
「ウンギュ、さっきのお客さんがまた来たみたい」
「うん?」
ドアが開いてウンギュが顔を見せたとき、
「こ、こんにちは、久しぶり・・・アハハ」
久しぶりに会うウンギュの顔を見て緊張で唇はけいれんするし、声がうまく出ないジョンウォン。
ウンギュは別れたときと変わらず茶褐色の髪で、顔が少し日焼けしているぐらい・・・

『どんな言葉で歓迎してくれるの?どんな表情であたしを迎えてくれるの?
 頼むから笑って、お願いだから驚いた表情だけはしないで、お願いだから』

「うん?」
「あ、あたしジョンウォンよ。久しぶり」
「お前もコロッケ食べる?」
『え、え?何て?』
ウンギュの口から出た思わぬ言葉に思考停止のジョンウォン。
「コロッケ揚げておくから友だちと話しておいで」
家の中にいた女性(エプロン姿!)がウンギュを部屋の外に押し出すと、ウンギュはジョンウォンを
ジロジロと見てきたあとで、ウンギュはその場に座り込み、ジョンウォンに興味がなさそうに指で
床に丸い円を描いてて。
「あ、あたしのこと覚えてるよね?ジョンウォンなんだけど・・・」
すでに涙声になってしまうジョンウォン。
「中にいるひとは恋人なの?」
という質問に、何のためらいもなく明るい表情で首を縦に振るウンギュ。
「恋人・・・なんだ」
「うん、寒いからオレ(部屋に)入るよ」

・・・こんな結末だったんだ。結局はあたしが罰を受けたってことなんだ。
ここへ訪ねて来るまでもなかったんじゃない・・・ウンギュがあたしを見る目には、何の感情も
こめられていない・・・あるのはただコロッケのことだけで、あたしは見えてない。

それでもドアに手をかけたウンギュに声をかけるジョンウォン。
「あたし、待っててもいい?」
と取り付く島がないウンギュになんとか話しかけたのに、
「コロッケ楽しみ~」
と、バタン!とドアを閉められちゃって。

「お客さん送っていった?誰?あんたの姉さんじゃ?」
「知らない人。ウッ・・オレ、頭痛い」
「あ、さっき薬買っておいたから。棚の上にあるよ」
窓越しに聞こえてくるウンギュの声にズルズルとドアにもたれてへたり込んだジョンウォン。
財布に入れていたペンダント二つと千ウォン札を手の上に乗せて。

三ヶ月ぐらい前に偶然スーパーでもらったお釣りの千ウォン札の隅に書かれた文字。
<トェジ ネッコ(ぶたはオレのもの)>
忘れていた涙が一気に押し寄せてどうすることもできない。
聞きたかったのに。また会えたときに「これ書いたのあんたなの?」って聞きたかったのに。
こんな風に突然変わっちゃったら何も聞けないじゃない。

部屋の外まで聞こえてくるご機嫌な様子のウンギュの声。
二時間ほどそうしてウンギュの部屋の前で泣くだけ泣いたジョンウォンは足をひきずるようにして
家路に着きます。

ウンギュ、あたしもしかしたら死んでしまうかも。
自分がしたことに対する罰をただ受けただけなのに・・・ウンギュも同じぐらい辛かったはずなのに
息をするのもつらくて、目を開くことさえつらい、あたしが生きてるってことが悔しいだけ。

家にたどり着いたジョンウォンはちょうど隣の家から出てきたソヒョンと出会って。(ウンギュ姉)
「ジョンウォン、久しぶりね」
「あ、はい」
「どこ行ってたの?」
「オンニの弟に会ってきました。ウンギュに」
「えっ?」
少し驚いたウンギュ姉の声。
そしてジョンウォンに一歩近寄ってウンギュ姉が用心深く、
「ショック受けたでしょ?」
と聞いてきて。
「オンニも知ってたんですね」
「それはもちろん。三ヶ月前からだから」
「・・・三ヶ月にもなるんですか?」
「ごめんね、話せなかったの。いっそ知らないほうがマシだと思って」
あたしと別れて二ヶ月で、離れてしまったたった二ヶ月の間に他の人を見つけて・・・
ウンギュ、あんたはホントにた易く人を愛するんだ・・・あたしの一番大事な思い出たちが
少しずつ消えていく・・・

「じゃあウンギュにはもう会わないつもり?会わないつもりなの?」
「・・・あの、会わないんじゃなくて会えません。もう会えないんです」
静かにあたしを見つめるウンギュ姉。
「二度と会わないの?」
「あたしがどうこうできる問題じゃないです」
「・・・ジョンウォンにはちょっと失望した」
どうしてあたしに失望を??・・・ジョンウォンがそう聞こうとしたときには静かに家に入って
しまったウンギュ姉。

「失望って・・・じゃああたしはどうするべきだと?最後までウンギュにすがりつけと?
 あたしを忘れた人、あたしに背を向けた人に戻ってきてって泣いてすがってみろと?
 すがって帰ってきてくれるならそうしたい・・・」
一人残されたジョンウォンは空に向かってつぶやくだけで。

翌日。
泣きながら寝てしまったせいで目が腫れまくったジョンウォンをヒウォンが訪ねてきます。
ヒウォンは目がボンボンに腫れた彼女にビックリ。
「どうしたんだ?」
「昨日はゴメンね、オンマにごめんなさいって伝えて」
「・・・ごめん」
「何が?」
「お前が行ってしまうのが怖くて二ヶ月も騙してたこと。お前はつらいのにオレだけ幸せで」
「いいよ、あたしでもそうしたはずだから。オンマが戻ってきてホントによかったね」
「アッパも今月末には退院するんだ」
「よかった、家族がそろうんだね。ホントによかった」
「ウンギュには会ったか?」
「え?あーううん、昨日ウンギュは家にいなかったから」
「じゃあ今日一緒に行こう」
「えっ!?」
「今日一緒に行こう。最後にお前とウンギュが一緒にいるのを見てちゃんとあきらめるから」
自分に向かってニッコリ笑ってみせるヒウォン。
「だ、ダメよっ!」
「どうして?」
「あー、ウンギュのことはあたしがちゃんとするから大丈夫、心配しないで」
「なに行ってるんだ、行こう、さあ立てよ!」
ジョンウォンの手を引っぱって座り込もうとするジョンウォンをズルズルと引きずってでも行こう
としてるヒウォン。
「ヒウォン、ちょっと!」
「なんだよ」
「いや、あたしちゃんとした姿でウンギュに会いたいの。この顔見たら驚いて逃げるでしょ?
 それに二人きりでステキな再会にしたいし・・・」
ジョンウォンの手を離してくれたヒウォン。
「あーもう!好きなようにしろっ」
ヒウォンはそう言ってジョンウォンを置いてスタスタと歩きはじめ・・・
「ヒウォン・・・あたしたち・・・」
「『あたしたち』なんだよ?」
「また友だちになることができるよね?」
返事の代わりにOKサインをして見せて、
「メシでも食いに行こう、ジョンウォン」
「そうしよう!」
あたしもヒウォンも愛する人を一日で心の整理をつけるなんて容易じゃない。そうするまですごく
つらい日々が続くかもだけど、それでもやってみよう。努力してみよう。

1年後。
ジョンウォンはまだウンギュとの別れを受け入れられないままで。
『もう一年も経ったのにあたしはまだ泣いてて。
 昼間はユン・ジョンウォンとして明るく過ごし、夜になればただのバカになってウンギュを想って
 泣くばかり。
 窓からお向かいの屋上を眺めるのが日課になっちゃって・・・・ひょっとしたらウンギュが屋上に
 出てくるんじゃないかと思って。

 スウォンまで行ってウンギュの部屋の近所をうろついてみて、ウンギュが幸せそうに彼女と笑って
 いるのを見るたびにあわてて背を向けて隠れたジョンウォン。
 1年は長いと感じたのに、忘れるには十分な時間だと思ってたのに・・・
 今日もやっぱりウンギュを待つジョンウォン。
 到底彼のことを忘れるなんてできっこない・・・お願いだから戻ってきて・・・』

そんなある日ドラムのソヒョンオンニからナリと三人でランチしようと誘われたジョンウォンは
待ち合わせ場所へ向かいます。
ナリとは数ヶ月ぶりの再会になるジョンウォン。
一年前にウンギュに会いに行ってきたとジョンウォンに聞いてからはソヒョンオンニもナリも気を
使って、ジョンウォンの前でウンギュの名前を出さないようしてて。
二人でスウォンにいるウンギュに会いにいくときもジョンウォンには言わないで行ってるみたいで。
こんな風に気を使ってもらうことを望んだわけじゃないし、自分は大丈夫だといいたいけどそれを
口には出せないジョンウォン。

三人で公園を歩いてるとちょうどバンドがライブをやっるらしくて音楽が聞こえてきて。
ソヒョンオンニが興味津々でナリとジョンウォンを引っ張ってそちらに向かいます。
おなかがすいてるからイヤイヤついていったジョンウォンですが・・・

なんとマイクを握って曲を紹介しているのはウンギュの恋人で!
しかもその格好はどう見ても・・・男で!?

ジョンウォンは驚きまくってソヒョンオンニを質問責め!
「オ、オンニ!あの人はウンギュの彼女じゃないの?ウンギュと同居してる人でしょ?
 ウンギュは男が好きだったの?あの人は男だったの?」
「は?ジョンウォン、何言ってるの?」
いったいどういうこと?あの男はウンギュと同居してた女で・・・だけど男で?
ウンギュが男を好きだったってこと?
混乱しているジョンウォンの隣でナリが涙声でつぶやく。
「ウンギュオッパ」
この子はまた何言ってるの?ウンギュだなんて・・・後ろのほうにいたジョンウォンはナリの声に
弾かれたように人込みをかきわけて前の方へと進んで行き、マイクを握って歌っているウンギュの
前まで行きます。
無表情で淡々と歌を歌っているウンギュ。


バカなネコ トマトを盗むネコ
夜になって月が昇れば窓際に座ってお隣を見て悲しげに泣くだろう
放して お願いだから放して 今まではバカなネコの鳴き声なんかなんとも思ってなかったけど
止まないププの鳴き声にオレも一緒に泣いてしまった


片手で口を覆ってフラついたジョンウォンを後ろに立っていたソヒョンオンニが支えてくれて。
「オ、オンニ、なんでウンギュがあの歌を歌ってるの?あたしを忘れたのに、あたしを忘れちゃった
 のに。それにウンギュの恋人が男だったなんて・・・」
「あの子はウンギュと一緒に音楽活動してる友達よ。ウンギュの恋人って?」
「ウンギュの彼女じゃないの?!」
「ええ??」
あきれるように大声で聞き返すソヒョンオンニ。
「いったいなに言ってるの、ジョンウォン?」
「あの人・・・ウンギュが自分の彼女だと・・・ウンギュ姉も『ショックだったでしょ?』って
 聞いてきたし。あたしも全部わかったから隠さなくてもいいです・・・男がいたなんて・・・」
ウンギュの悲しい歌声・・・悲しい顔で歌ってるのを見るのも聴くのもつらくてその場を離れようと
したジョンウォンをソヒョンオンニがガシッと掴まえて。
「なに言ってるの?!あの男はただウンギュと一緒に住んでる友だちだってば!」
「みんなわかってるんです!オンニも言ったじゃないですか!」
「あたしがなにを話したって?ウンギュになにがあったのか知ってるんだよね?」
「・・・・・・」
「知らなかったの?今までずっと知らずにいた?ジョンウォンはあの男がウンギュの彼女だって
 思って今まで苦しんでたの?」
「それじゃ・・・オンニが知ってるっていうのは何ですか?」
「あーもうっ!バカっ!あたしはあんたのせいで生きた心地がしないわ。あたしはジョンウォンが
 ウンギュがバカになったから捨てたのかと思って、そうしたんだと思ったからあえてあんたの
 前ではウンギュの話をしなかったのに」
「バカ・・・って?」
呆れたように頭を後ろに反らしてついに笑い出したソヒョンオンニ。
「あたしとナリはそんなことも知らずにあんたのこと、悪い女だと思ったじゃない」
「いったい何の話??」
途中から話を聞いていたナリもジョンウォンの前で大騒ぎ!
「何ですかっ!私たちはそんなことも知らずにオンニを悪く言ったじゃないですか!
 オンニは全部知ってると思ったから・・・ウンギュオッパはスウォンに行って二ヶ月後に大きい
 事故にあったんです!それで頭が壊れちゃったんです!」
『え?・・・何て?』
「私たちはそのせいでオンニがオッパを捨てたんだと思ってすごく恨んだのに・・・」
「バカなんて・・・ナリ・・・事故って・・・」
「オッパはライブ中に天井の照明が落ちて・・・記憶をなくしたんじゃないんです。
 いっそそのほうが良かったんですが・・・オッパの頭は壊れちゃったんです」
それじゃあウンギュ姉の言葉の意味は事故のことを指してたの?とあの日の記憶を辿るジョンウォン。
自分に失望したと言ったウンギュ姉の言葉は事故のことを言ってたんだ。ウンギュに会いにいこうと
したあたしにナリがウンギュを困らせるなと言ったことも。
ウンギュがあたしを知らない人みたいに冷たく接したことも、頭痛で薬を飲んでたのもみんな事故の
せいだったんだ。

曲を歌い終えたウンギュがマイクをおろすと途端に増えた観衆からアンコールの声が出て。
ウンギュの彼女と勘違いした女性よりも女らしい男が、
「もっと聴きたいでしょうが、残念ながら彼が歌えるのはこれ一曲なんです」
と説明し、他の子がマイクを持って歌を歌い始めるとウンギュはゆっくりと歩き出して公園をあとに
しようとしてて。
「ウンギュを掴まえないの?」
魂が抜けたように呆然としてるあたしの頭をポンと叩いていたずらっぽく聞いてきて、ジョンウォン
はそれに返事もせずにウンギュの後を追いかけて駆け出して彼を後ろから両腕を広げて抱きしめて。
「わっ!ストーカーだ!」
「なんで照明なんかに当たってるのよっ!馬鹿ねっ!」
「放せよ~」
「ちょっと、このバカ、あんた頭が壊れたって?あたしは憶えてる?ん?誰かわかる?」
そう言いながらウンギュの背中に顔をうずめてワアワア子供のように泣き出したジョンウォン。
「隣の家の友だち!」
「バカ、隣の家の彼女だってば」
「うんうん、わかってる」
「今日あたしがここに来なかったらどうするつもりだったのよっ」
「ププに会いたい」
「ププを見に行く?」
「うんっ」
あたしの手をギュッとつかんだウンギュがソヒョンオンニとナリを見て嬉そうに駆け出す。
泣いてるのを慌てて隠すソヒョンオンニと、隠しようがないほど号泣してるナリ。

バカになってしまったウンギュ。
信じたくない彼の姿に心臓がギュッと締め付けられそうだけど、欲張るのはやめよう。
初めから少しずつ取り戻していこう。

「ウンギュ、見て。これあんたが書いたんでしょう?そうでしょ?」
ずっと財布にたたんでいれて持ってた千ウォン札を広げて見せる。
「お?うん」
嬉そうにブンブンと首を縦に振るウンギュ。
「そうだと思ってた。あんたあたしのことがすごく好きなのよ。それは思い出した?」
「うん」
「ヒウォンのお父さんもよくなって戻ってきたから、あんたもあたしと一緒に帰ろう。わかった?」
「どこに帰る?」
「あたしのところ。ね、あんたのバンドの名前は思い出した?」
「バンドの名前?」
「ドレミファソラシドじゃない」
「うん、うん」
「あんたとあたしと一緒にまた『ド』から始めるの、わかった?」
「ヒウォンに会いたい」
「そうしよう、ヒウォンに会って、チェガンにも会って、ソヒョンオンニにも会って、ププも見て。
 みんなに会いに行こう」
なにがそんなに楽しいのかアイスクリームを食べながらソヒョンオンニとはしゃぐウンギュ。
ジョンウォンのそばにきたナリが小さい声で尋ねてきて。
「オンニ自信ありますか?」
「なにが?」
「オッパを治す自信」
「当然。一年内にね」
「先に彼を治したほうがつきあいましょうね!」
「なんですって!」
「約束ですよっ!」
「ダメーっ!そんなのないってば!」
「オンニが笑うの一年半ぶりですね、とにかく今から開始ですよ!」
「笑わせないで、この小娘が~」
ジョンウォンは慌ててウンギュとソヒョンオンニに追いついて、そのあとに駆けつけたナリ。
財布にいれていたペンダントを取り出して素早くウンギュの首にかけたジョンウォン。
(ウンギュは顔をしかめてイヤ~な顔)
「このペンダント一生つけてて!」

『絶対に1年以内に元に戻ろうね、ウンギュ。
 そしてあたしたちのペンダントのように海も行って、キスもして、おいしいもの食べに行って、
 遊園地も遊びに行こう』

あふれそうになる涙をナリに見られないように素早くぬぐってウンギュの手をぎゅっと掴む。
もう絶対この手を離さない。
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