ドラマ「信義」関連の記事を更新しています。「韓国には行ったことがありません」からブログタイトル変更しました。
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「ウンス様」
「ウンス様?」
 怪訝を含んだ呼びかけにようやく気づいたウンスが、声のした方を向く。
「はい」
「もう、目を開けて頂いても宜しいですよ。紅(べに)は差し終わりましたので。
あとは、御髪(おぐし)だけです」
「・・・ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて。お願いします」
 手を止めてウンスを覗き込んでいたオンニが「はい」と答えて、作業に戻る。
 ウンスは、再び目を閉じる。
 先ほど話しかけた者が、その様子に目を留める。『眠いのだろうか?』そう思
っていると、呟くような声が漏れた。
「心配しないで。私は大丈夫よ」
 目を閉じていらっしゃるのに、自分が見ていることにお気づきになったようだ。
こちらを気遣う言葉に「はい」と答え、再び忙しく手を動かす。
 目を閉じれば、チェ・ヨン、その人が思い浮かぶ。「大丈夫よ」って書いていて
も、手紙を読んできっと心配する。そんな風に考えているせいか、今自分が心
に思い浮かべるヨンは、深刻そうな顔つきで手紙を握りしめている、そんな姿
だった。
『心配しないで。私は大丈夫よ』
 自分を案じるヨンに呼びかけた、祈りにも似たその言葉が声になって出たこと
を、ウンスは知る由もない。
「これで、よしと」
 オンニたちは、終わった者から順に後ろに下がり、他の者の作業を邪魔しな
いよう見守っていた。そうして、自分が分担した仕上がり具合を確かめては、互
いに頷いて満足げな笑みを浮かべる。
「出来ましたよ」
 ウンスの髪に飾りを挿し終わったオンニが、ウンスの前に卓上の鏡台を差し
出す。ウンスは目を開けて、曇った鏡に自分を映し出す。
「・・・嘘から出た真実(まこと)って、まさにこのことね」
 そこには、手紙に書いた通りの妓生になった自分がいた。
「妓生になる」
 手紙に書いた(正確には書いてもらったんだけど)ものの、本当に妓生になる
つもりはなかった。あの人とヨンスさんたちを呼ぶための誘い文句としてピッタ
リだったし、企みめいた内容にすることで、この状況を私が楽しんでいることを
強調したかった。(実際楽しく過ごしているから嘘じゃない)
 鏡の中の妓生は、頭のてっぺんで高く結い上げた髪に飾りをいくつか挿して、
耳には赤い房飾りのイヤリングをつけてもらっている。メイクは、控えめに塗ら
れた白粉の上に、目尻の赤い色粉と口唇の赤が目を引く。アイラインは目尻が
上がるようにくっきりと描かれていて、上目づかいで見たときに、誘う眼差しを
作り出す。口唇はふくらみがある部分を大きめに描き、笑みを浮かべたときに
艶めいた雰囲気を醸し出すようにと計算されていた。
「ウンス様、とてもよくお似合いですわ」
 席を外していたメヒャンが部屋に戻ってきて声をかける。
「ありがとう。このアイメイクは今の流行なの?火手印のメイクと似てるわ」
 鏡越しにメヒャンに礼を言いながら、ウンスは鏡に顔がくっつくほど近づいて、
目元をしげしげと眺める。
「メイ?・・・ファ?」
「あー、いいの。こっちの話です。うん。火手印が妓生のメイクを取り入れてるっ
てことね、多分」
 一人で納得している様子のウンスに優しい笑みを投げていたメヒャンが、思
い出したように尋ねる。
「ウンス様、ところで、夜のお召しはどうなさいますか?」
「え?」
「ホンイたちは赤いチマ、小豆色のチョゴリを用意致しました。ウンス様のお召
しは、いかがさせて頂きましょうか?」
 メヒャンが席を外していたのは、ホンイを含めた娘たちに夜の席に着る服を
用意していたのだ。ようやく質問の意味を理解したウンスは、
「ああ、そうね・・・」
 と、チラリと自分の風呂敷に視線を投げる。緋色の服以外に着るものがない。
ウダルチの私服でもいいけれど、その服に戻るならメイクもヘアも元に戻さな
いと、何だかちぐはぐなことになる。それに、華やかな装いが久しぶりすぎて、
ウダルチの私服に戻ることが、ちょっとどころか、ものすごく惜しい。
 すっかり黙り込んだウンスに、メヒャンが提案を出す。
「緋色のお召しものは新年の晴れ着にということであれば、私のもので宜しけ
れば、萌黄のチマをお召しになりますか?」
「そうね・・・」
 聞こえてはいるようだが、自分の案はあまりお考えに入っていないのではな
いか。メヒャンは、ふとウンスの姿を見回す。
「そのままお出ましになってはいかが・・・」
「あの、この格好で出てもいいかしら?」
 唐突に二人が同時に口を開いた。間を置いて、ウンスもメヒャンも声に出して
笑う。
「同じことを」
「ええ、そうみたい」
「そのままでは冷えますから、内着とチョゴリをお出ししますね。あとは、ポソン
(くつした)とコッシン(靴)が要りますね。持ってまいります」
「ありがとう・・・あと、一つお願いを聞いてもらってもいいかしら?」
「私に出来ることでしたら何なりと」
「顔を隠すような布はありますか?あったら貸して欲しいんですが」
「隠す・・・ですか?たとえば、カリゲ(가리개:覆い)のようなものですか?」
「うーん、出来れば、頭からすっぽり被りたいんだけど」
 メヒャンは束の間考えてすぐに答える。
「それなら、モンスがございます。長さは腰丈ほどございますが」
 その言葉にウンスが手を叩く。
「それ、いいわ!貸して頂けます?」
「もちろんです」
 満足そうに微笑むウンスに、メヒャンが尋ねる。
「何にお使いになるのですか?」
「せっかく妓生になったんだもの。一度くらい、虎が「ニャー」って鳴くところを見
てみたいわ」

<つづく>

虎が「ニャー」と鳴くところを見てみたい。
何の意味か、書こうとしましたが時間切れです。
次回までしばしお待ちを・・・
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 部屋の扉が勢いよく開き、室内の暖気が内廊下へと吸い出される。替わりに、
夜の冷気がその空白を埋めるように、足元から音もなく室内へと滲み込む。ヨ
ンは、その様を身体で感じながら、精神は戸口の先に見えるものを凝視するこ
とに集中していた。
 五人の人影が目に飛び込み、ヨンはすぐさまウンスを探す。全員が女である
ことは、先ほどの足音で承知していた。視線が、赤い布を被った女に引き寄せ
られて不意に留まる。そこから目を離さぬまま、視野を広げて他の四人を一瞥
する。会釈で頭を下げている四人とも、髪の色が黒い。
『では、あれが』
 赤い布を被った女がウンス、その人だという確たる証を求めて視線が走る。
上半身は布で覆われ、笠のつばが張り出していて顔の輪郭がはっきりしない。
瞬きもしないで探し回る目が遂に、赤い布から出ている白い手を捕らえる。
 見覚えのある指、見覚えのある爪の形だった。
『いた』
 詰めていた息が、緊張の緩んだ口元からフッと漏れる。
 ちょうど、会釈していた女たちが姿勢を戻したので、ヨンはそちらに目をやる。
主がゆっくりと歩き出すと、手を引かれているウンスもそれに合わせて慎重に
足を運ぶ。二人の後ろに立っていた女は、酒器を載せた盆を持ったまま敷居を
越えてすぐに止まった。と、同時に今度は静かに扉が閉まる。
 ウンスが被っている布は恐らくモンスだろう。普通であれば、顔の前に視界を
確保できるだけの隙間があるはずだが、さしずめ前後逆に被っているというと
ころだろうか。
『何がしたいのだろう』
 すぐに判ることではあるが、何となく身構えてその時を待つ。

 メヒャンに促されて、ウンスはヨンと向かい合うように立った。手を離したメヒャ
ンがウンスの背後に回ると、ウンスはその場に片膝をつく。笠帽の紐をあごか
ら外して、深呼吸を一つする。
「ナウリ、お初にお目にかかります。ソガン亭の妓生ファンウォルでございます。
どうぞ、末永くご贔屓を賜りますようお頼み申し上げます」
 ウンスが口上を述べ終わったと同時に、メヒャンが背後からさっとモンスを剥
ぐ。ウンスはゆっくりと立ち上がりながら、上目づかいでヨンに向かって薄く笑
みを浮かべる。

<つづく>

今回もまたもや短め(汗)
もう少し書いているのですが、まだ完成していないので後日アップします。

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