二次_紅楼夢

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只今書いております「開京想曲」とその前に書いていた「紅楼夢」。
オリジナルのキャラが多数出ているし、時代が異なるので頭がこんがらがります。
整理整頓してみる意味で記事を書いてみました。

まず、「紅楼夢」に登場していたメヒャンが、「開京想曲」ではメインに登場しています。
(メヒャンは妓名で、本名はソルソンってことで)
時代設定としては「開京想曲」のほうが古く、ソルソンが八歳でお嫁に行くエピの段階で
1312年ぐらいの出来事にしています。
ウンスがメヒャンの妓楼で妓生としてあがるというエピになった「紅楼夢」は
1351年の年末として設定しています。

おもな人物紹介はこんな感じで・・・
(内容はちょこっとネタバレしている部分があるので、そこは伏せ字にしました)
   ★マークは「信義」のドラマか小説に登場していたキャラ
   〇マークは私が設定したキャラ

〇メヒャン(梅香)
  妓楼ソガン亭の主。年は40代後半。
  メヒャンは妓名で、本名はソルソン(雪松)。
  「想曲」の作者。

★マンボ
  スリバンの元締め。
  「姐さん」と二人でスリバンを束ねている。
  ムン・チフとは兄弟弟子だったため、チェ・ヨンからは「師叔」と呼ばれている。

★姐さん
  クッパ屋を営む傍らでスリバンを束ねている。
  マンボとは実の姉弟ではない。⇒これは私が設定した間柄です

〇キム・ヨンス(24歳ぐらい)
  ウダルチ乙組の隊員。背が高く、物静かな性格。  
  ホンイとの婚約を条件に、念願だったウダルチに入隊した。

〇ヨンスの父
  禁軍の中郎将。

〇ヨンスの母(ユン・ヘジョン)
  四十代前半。恰幅のよい体つき。ホンイにカヤグムを教えている。
  ソルソンとはよきライバルであり、友人の間柄。
  実はソガン亭のオーナーだったりする。⇒ここ、字を伏せました。

〇コ・ホンイ
  十五歳。ヨンスの許婚。(ホンイが八歳のときに婚約した)

〇ホンイの母
  三十代後半。ヨンス母のカヤグムの妹弟子。

〇ホンイの父
  三十代後半。

★トルベ
  二十七ぐらい?乙組の組長(組長っていうのは私の設定です)

〇ウンソプ
  二十七ぐらい?(トルベと同い年設定)

★トクマン

★ウォル
  ムガクシ。ウンスの警護をしていた二人のムガクシのうちの一人。
  (ちなみにもう一人は「ヨンシ」という名前です)

★ミョンファ
  二十代。ワンビママが連れてきた侍女。
  ちゃっかり者。
   ⇒裏設定では、王と王妃が帰国する際に宿屋で急襲された際
    ワンビママの食事のお膳を片づけていて離席していたという設定。

★ハナ、ミナ、トンニョン、ヘミョン
  メヒャンが連れてきたホンイと歳が近い娘たち。

★ク・サンホ
  ソルソンの夫。(くわしくは別記事で)

こんな感じで・・・
キャラ紹介の記事を書こうと思い、最初から見直していたら冷や汗が止まらず。
設定間違えてたり、なんかエピソードが飛んでいたりして・・・
思わず遠目で読んでみたりして(現実逃避)

ちなみに恭愍王のときには朝貢として女性を差し出してはいなかった・・・はず。
ま、これも私のテキトー設定のひとつとして受け止めて頂ければと思います。

「開京想曲」のキャラは当面は更新した記事の下に付け加えていこうと思っています。
(そのほうが私が分かり易いので滝汗)⇒すでにキャラの迷い道に差しかかっている?!)

「開京想曲」の続きは今書いています。
5月中にアップできたらいいな。

ではでは

よい週末をお過ごしください♪
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部屋から出てきた店の女たちが、傍の柱にもたれていたヨンに会釈をして下がる。

閉まった扉を見つめていると、しばらくして扉が少しだけ開き、ウンスが顔だけを出す。
「お待たせ、もういいわよ」
それ以上は出てこないつもりらしい。ひと呼吸置いてから、ヨンはウンスが開けた扉を
もう少し広げて中へと入る。卓の上には、ポシャギ(風呂敷)が広がっており、その上には
先ほどウンスが身に着けていたものと同じ色のチマが畳んであった。
「メヒャンさんに、モンスと妓生の衣装をもらったのよ」
ウンスは嬉しそうにそう言うと、「座ってて」と声をかけて、作業に戻る。
ヨンは戸口に立ったままで、ウンスをじっと眺める。
ポシャギの布の両端を持って結ぶ。たったそれだけのこと。それなのに、この人の仕草や
振る舞い、立ち働いている姿に目を奪われる。取るに足りない、他の者であれば、目に
留めないようなことも、この人に限っては、己はそうもいかない。
己の視線に気づいて、問いかけるように首を傾げるその人に、取り立てて言うことがない
場合がほとんどで、そんなときは、「何も」という返事代わりに小さく首を振るのがこの頃の
常だった。
明かりに照らされたウンスの姿を、上から下までざっと目を走らせる。ウンスは、一食(約三十分)も
経たぬうちに、宿舎で過ごすいつもの格好に戻っていた。化粧気のない、見慣れた横顔に
安堵しながら、己を誘った気配がどこにも残っていないことに惜しい気もあった。
「どうかした?」
「・・・何も」
視線に気づいて尋ねたウンスに、ヨンはやはりそんな返事をした。

湯気の上がるクッパが運ばれてくると、二人は卓に並んで座り、それぞれ匙を口に運ぶ。
視線を感じて、ヨンが隣を見る。ウンスが手をとめてこちらをじっと見ていた。
「何だ?」
「・・・ううん。何でもないわ」
いぶかしむヨンに、ウンスは笑ってそう答える。
『ただ食べているだけなのに、この人はどうしてこんなに絵になるのかしら』
ウンスは、ただただ見惚れていた。
咀嚼するときの顎のラインがたまらない。食べ方も粗雑なようでいて、育ちの良さが滲み出ている。
宿舎で食べるときは、他の隊員たちと一緒だから、まじまじと見ることは出来ない。
ついつい顔がニマニマしてしまう。
『何だ?』
匙を止めてヨンが目で問う。
『ううん、何でもないったら』
にやけた口元を手で隠しながら、ウンスはブンブンと首を振った。
「あ、そうだ」
首を振ったことで、ウンスは思い出した。
「私、妓生になってみたかったの」
突拍子もないことを言い出したウンスに、ヨンは驚いて匙が止まる。
「しばらく男装ばっかりだったでしょ?おしゃれが出来ないのはまあ我慢するとして、だけど
貴方の態度がわりと平然としているから、私のことをあまり意識してないのかなって考えてて・・・」
一つの部屋で寝泊まりしているのに、ヨンは気まずくならないようにいろいろと配慮してくれていた。
それは嬉しかったけれど、彼の部屋で一緒に住むと決めたときに、そうなってもいいとウンスは
覚悟していたのだ。
でも、彼は一向に手を出して来ない。緊張せず、居心地良くさせてもらっている。有難く思っている
心と裏腹に、段々と自分に自信がなくなってきた。
『私って、そんなに魅力ない?』
そんなウンスの不安は、今日見事に消し飛んで行った。もごもごと語尾を濁したウンスの言葉を
じっと聞いていたヨンは、ウンスの左手を取ると包帯の部分に視線を向けた。
「これが治ったら、貴女の身体から毒が消えたら、オレは自分を抑える自信がない」
ウンスは熱い眼差しに圧倒されて、問われてもいないのに小さく頷いた。
その返事に、ヨンは喉の渇きを覚えて咳払いを一つした。

食べ終わったヨンがウンスを待っていると、戸口に人の気配がした。
「少し宜しいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
メヒャンの声にウンスが答える。
「ウダルチの皆様は、出立のご準備が整いました」
ウンスが着替えている間にトルベたちにはクッパが出されていた。あちらは既に食べ終わって
帰り支度も出来たようだった。
「それじゃ、私たちも」
最後に汁を飲み干したウンスが立ちあがる。
「今日は有り難うございました。お礼はまた後日改めて・・・」
「次はない」
メヒャンの言葉をヨンが打ち切る。
「主、お前はこの人を騙してここに連れてきた。王が医仙と称される方を呼び出して協力を請う。
一つ間違えば、大罪に問われても申し開きはできない危ない橋だ。仮に、ホンイという娘のため
だとしても、知り合いの娘にそこまでする理由を、お前はこの方に打ち明けていない。隠し事の
ある者に、この方を近づけるわけにはいかない」
睨みつけるヨンの瞳を、問いかけるウンスの瞳を、メヒャンは真っ直ぐに受け止める。
「全てお見通しでございますね。参りました」
メヒャンはあっさりとヨンの言い分を認める。
「此の度の件、もともとはヘジョンから相談を持ちかけられたことがきっかけでした」
「ヘジョンさん?」
「ええ。ユン・ヘジョンはヨンスの母で、私の友人です。そして、この妓楼ソガン亭の真の主です」
驚いた表情を見せたウンスに微笑むと、メヒャンは話を続ける。
「私は、彼女からこの妓楼を任されている、言わば雇われの主なのです。私とヘジョンとは、昔から
カヤグムの好敵手でした。一身上の都合で七年ほど前にケギョンを離れたのですが、数年後再び
ケギョンに戻って来た際に、彼女がここを居抜きで買って、私に切り盛りするようにと薦めてくれたの
です。当時はどうやって日々の糧を得ようかと途方に暮れておりましたので、とても助かりました。
私は、彼女に大恩があるのです」
当時を懐かしむようにメヒャンは語る。
「ヨンスとホンイ。仮初めの許婚として始まった二人ですが、互いを思慕しているのではないか。
ヘジョンはそう考えていたようです。このまま真の許婚になればと思っていた矢先に、ホンイが婚書を
返すと言い出して。何とか二人で話す場を設けたいというヘジョンに、任せて欲しいと私の方から
申し出ました。母親が口を出すと、ヨンスが反発するかもしれない。そんなことも考えてのことでした」
顔を上げたメヒャンがヨンを見つめる。
「私は八歳で嫁ぎました。夫は私よりも二つ年下でした。誰かを慕う。そんな気持ちがあるということを
知る前の出来事でした。ヨンスとホンイ。二人の為と思うあまり、行き過ぎたことを致しました。
どうか、お許し下さいませ」

それからしばらくして、ウンスたちはソガン亭をあとにした。
一行を見送ったあと、メヒャンは一人で庭に佇んでいた。
すると闇の中から滲み出すように人影が二つ、メヒャンの背後に現れた。
「行ったかい?」
中年の女の声が問う。
「ええ、先ほど」
メヒャンはそちらに目を向けず、前を向いたまま答える。
「ヨンはおめえのこと、気づいたのか?」
中年の男の声が問う。
「いいえ。でも・・・」
「でも?」
「訊かれたわ。『前にどこかで会っているな?』って」
「何て答えたんだい?」
ウンスが着替えている間、廊下ですれ違いざまにそう聞かれた。
「何年か前に、宴席で見かけたと答えたわ。あとは妓楼街でウダルチと歩く姿を見かけたと」
「それで?」
メヒャンは首を振る。
「それ以上は訊いてこなかった。あの日忠恵王を殺そうとした女が私だとはわからなかったみたい。
あのときは声も出さず、顔も隠していたから」
「そうかい」
「そうか」
中年の女が再び問う。
「満足かい?」
「ええ」
メヒャンは幸せそうに微笑んだ。


<おわり>

ヨンスの母。
ヘジョンという名前にしましたが、もしや前に他の名前で登場させてたりして!?
前に書いた内容をどんどん忘れていく~(自業自得です、はい)

ここで、一旦本編は終わります。
次回「番外編」ということでメヒャンの話が少しだけ続きます。
「やっぱりこれ、邪魔だったわ」
ウンスは赤のモンスをさっと外す。物音とトルベの声に、部屋を出て様子を見にいこうとしたウンスをヨ
ンが引き留めて、「これと、これを」と渡されたのだ。言われるままに急いでチョゴリを羽織って紐を締
め、モンスを被ったものの、視界が悪かった。
ウダルチは、妓生のようなウンスに見とれるが、その視線を遮るようにヨンがウンスの傍に立ったので、
わざとらしく視線を外すほかなかった。
ウンスは割れた人垣をスタスタと歩いていくと、ヨンスとホンイの前で立ち止まる。
「ヨンスさん。貴方に用があって、ウダルチのみんなと一緒に来てもらったんだけど・・・」
「・・・私にですか?」
「ええ。でも、その用件は済んじゃったわ」
ニコッと微笑みかけられても、ヨンスはどう応じればよいのかわからない。いつしか、ホンイを掴まえて
いた手からも力が抜けて、するりとホンイの腕が離れる。
「メヒャンさん、どこか部屋を貸してもらえますか?」
「はい。こちらへ」
察したメヒャンが先に立つ。
「それじゃ、ヨンスさんとホンイは私と一緒に来て。あとのみんなは・・・」
「部屋で待機だ」
ウンスの語尾を拾うように隣からヨンが言い繋ぐと、トルベらが「はい」とすぐさま返事をする。
「あなた達も部屋に戻っていて」
メヒャンにそう声をかけられたトンニョンたちは、「はい」と返事をしたものの、皆心配そうな顔つきで
五人を見送った。

部屋にはヨンスとホンイ、そしてウンスの三人。
「ヨンスさん」
「はい」
「私、貴方をここに呼んで、確かめたいことがあったの」
「・・・何をでしょうか?」
「でも、それはもういいわ。さっきわかったから」
満足げに頷くウンスとは逆に、ヨンスの顔には戸惑いが広がる。
<果たしてヨンスはホンイのことを憶えているのか>
ホンイの話を聞いた限りでは、ヨンスはホンイのことを朝貢から守るためだけに婚約しただけで、彼には
他に本命の子がいるのだと思っていた。
けれど、先ほど廊下で見せたヨンスの目を見た時、それは違うのだと直感した。何とも思っていない子に
向ける目ではない。少なくともウンスはそう感じていた。
「あのね、ヨンスさん。ホンイから貴方に直接渡したいものがあるそうなんだけど」
ウンスがそう話を切り出すと、ヨンスは思い当たることがあったのか、ハッとした。
「・・・存じています。母が文で知らせて来ましたので」
伏し目がちに答えるヨンスの顔色は暗い。その表情を見たウンスは手応えを確かなものに感じて、言葉を続ける。
「そう。でも、私はその前にまず二人で話をするべきだと思って、それでヨンスさんをここに呼んだの。
ヨンスさん、貴方はどうしてひと目見て彼女が許婚のホンイさんだとわかったのかしら?確か、数年前に
一度か二度会ったきりだと聞いたけれど」
「それは・・・」
言いよどむヨンスに、ウンスはにっこりと笑う。
「じゃ、先ずはその理由(わけ)を彼女に話して。私は席を外すから」
ウンスはホンイに目をやる。ホンイは初めて会ったときのようにすがるような目を見せたりはせず、しっかりとこちらを
見返してくれた。
ウンスは安心して部屋を出る。

部屋を出るとヨンが待っていて、少し距離を置いたところにメヒャンが立っていた。
「話は終わったのですか?」
「ええ、まあ」
「ヨンスだったのですね」
「そうなの。貴方にまだ詳しいことを話してなかったわね」
「それは戻ってから伺います」
「・・・そう?」
「ええ。ではすぐに戻りましょう」
言うが早いか、背中をぐいぐい押して歩かせようとするヨンにウンスが慌てる。
「え?今から?」
「朝帰りすれば目立ちます。今なら夜もそれほど更けていない」
「イヤって言っても?」
立ち止まったヨンがウンスをじっと見る。「否」はない。目がそう言っていた。
「ふーっ、わかったわ」
あっさりと折れたウンスに、ヨンが怪訝な表情で覗き込む。
「なに?」
「聞き分けがいいので」
何か言い返そうとしたウンスがはたとする。
「あ、そうだ。着替えなきゃ」
このままでは目立つ。二人は立ち止まる。
「あの、チェ・ヨン様」
ずっとついてきていたメヒャンがそこで初めて口を開いた。
「酒と肴を用意してございます。せめてそれを召し上がってからでも」
「いや、いい。それよりこの方の着替えを急いでくれ」
「では、お召し替えが終わるまで、お待ちになっている皆様に酒と肴を・・・」
「用意が出来たらすぐに出るからいい」
取りつく島がない。大体の人はここで諦めるのだが、メヒャンは諦めなかった。
「お召し替えには一茶(十五分)ほどかかります。飲まず食わずのままでお客様にお帰り頂くわけには
参りません。医仙様を無理にお引き留めしたお詫びに、せめて・・・」
「要らん」
「(出た。『要らん』)」
互いに譲らない二人を前に、ウンスはしばらく傍観していたが・・・
「ねえ、じゃ、こうしましょう」
と提案を出す。
「私もお腹がすいたまま帰るのは辛いわ。でも、遅くなっても困るし。だから、簡単にお腹に入れられる
虫養いをご馳走してもらえますか?それなら食べるのに時間はかからないから」
「・・・」
ヨンは腕を組んだものの、何も言わない。今から戻ったところで兵舎に食べるものがないことはわかり
きっていた。
「『要らん』とは言わないから、それでいいみたいよ」
ニコッとメヒャンに微笑み、メヒャンは胸を撫で下ろす。
「ありがとうございます。では、早速お召し替えと食事の用意をしてまいります」
メヒャンがそそくさと席を外すと、ウンスが呟く。
「ねえ、私の勝ちね」
ガッツポーズをしてみせるが、それをしれっとスルーされた。
「・・・」
何か言いたげな口元だったけれど、いざ口にするとなると面倒だったらしい。歩きだした後ろ姿が少し
不貞腐れた様子で、ウンスは笑いをこらえながら後に続いた。

<つづく>

やってしまった(T_T)
前回更新した内容

誤:黒のモンス
正:赤のモンス

記憶があやふやすぎる。
そして、そして・・・
「なんで私、ウンスにモンスを被らせたんだよぉ(T_T)」
ウンスにモンスを被らせた(脱いでいたのに)・・・グスン
ウンスとモンス・・・
なんか似てる。

そしてそして・・・ヨンスとホンイ。
あとのことは二人に任せてってことで。
フェイドアウトしていくと思います。

昨日の夜、蜈蚣が出ました。
今年初の蜈蚣です。
なにかの暗示でしょうか?
(「完結、早く書けよ」とか・・・小さい字で書いてみた)
「あっ」
ガチャン!
どんっ

その声と物音で、ヨンスは我に返る。
三年前のあの日から、妓楼の内廊下へ。
たちまちに心は引き戻される。顔を上げて気を引き締めると、妓楼の間取りを頭に思い浮かべてみる。
聞こえてきた音に曇りがなかったことから、使用人たちが行き来する奥廊下で物音がしたのではないかと
推し量る。
「もうっ、ハナ!」
「・・・ごめん、ミナ」
物音に続いて、二人の若い女の声が聞こえた。やはり、声は近くで聞こえる。己が立っている場所から
二丈(約六メートル)も離れてはいない。この部屋を出て右に曲がった内廊下の突き当たり、奥廊下と交差した
辺りに二人は居るのだろう。
手燭は持っていないのか、それとも先ほどの物音で消えたのか、そちらに煌々とした灯りの気はない。
「おい」
と、背後から声がかかる。
「どうかしたのか?」
扉の障子越しに、ヒョンが尋ねてきた。
「店の者が粗相をしたようです。何かあれば声をかけます」
振り向いて小声でそう答えると、「頼んだ」と一言だけ返ってきた。
まもなく、慌てた足音が三つ近づいてきて女たちがいる場所で止まる。足音は三つとも軽い。女ばかりのようだ。
「気をつけて。水差しを割ってしまったわ」
やってきた者たちに、ミナという若い女が注意を促す。
「大丈夫よ。灯りを持ってきたから。何があったの?」
「この子がいきなり抱きついてきて」
誰かが破片でも拾っているのだろうか。カシャン、カシャンと途切れがちに音が聞こえてくる。
「ごめん、ミナ。だって、だって・・・何か柔らかいものを踏んだのよ。ぐにゃって・・・それでびっくりしちゃって・・・」
しばらくしんと静まりかえる。
「トンニョン、灯りをこっちに向けて」
「ヘミョン、何か見つけたの?」
「ねえ、ハナ。このぺったんこの匂い袋、あんたのじゃ?」
「・・・あ」
気の抜けた声がした。
事は収まったらしい。
そう判断して視線を戻そうとしたヨンスの耳が、不意に聞き覚えのある声を拾う。
「破片は大体拾ったわ。ミナ、怪我はない?ハナも大丈夫?」

「平気よ。ありがとう。お尻がちょっと痛いだけよ」
尻餅をついた尻をさすりながらミナが答える。
「ごめん、ミナ。さすろうか?」
「結構よ」
邪険に返すと、ハナはたちまちしょぼんとする。泣き出すのではないか。そんな風にミナが思い始めたとき、
俯いて傷心の境地だったはずのハナがぱあっとにこやかに顔を上げる。
「ね、見て!これをこうやって・・・ほら、元通りになったでしょ?!」
ぺったんこになった匂い袋を手で揉んで形を整えると、それを手に乗せて見せる。
「・・・そりゃ、よかったわね」
呆れたミナはそう答えるのが精一杯で、他の三人は苦笑するしかない。
と、トンニョンが手燭を持つ右手をゆっくりとヘミョンの方へと向ける。そちらで、何かが動いた気がした。
灯りはヘミョンの背後に立つ、一人の男を照らし出す。
ヘミョンは振り向いて、「きゃっ」と驚きの声を上げると、後ろに退いて男と距離をとる。男は整った顔立ちを
していたが、灯りに照らし出されたその表情は険しかった。
ヘミョンの隣に立っていたホンイも、驚いて後ずさりしようとした。すると、男がすっと手を伸ばしてきてホンイの
腕を掴み、離れることを許さない。じっと見つめる男の視線を受け止めたホンイは、逃げることも忘れて石の
ように固まる。
そのとき、奥廊下の向こうから近づいてくる足音が聞こえた。
「メヒャン様!」
ヘミョンが気づいて声を上げる。
「貴女たち、一体どうしてここに?」
メヒャンが驚きの声を上げると、四人が一斉にメヒャンに群がる。
「あの、ごめんなさい。お水をもらいに行こうとして・・・」
「ハナ、それは後で。それよりも、ホンイが・・・」
トンニョンが目配せをする。奥廊下の壁が死角になってよく見えない。メヒャンは前につと歩み出る。
「!」

ヨンスがいない。
トルベが外の気配に気づくと同時に、小さな悲鳴が聞こえた。視線を上げて目配せすると、トクマンたちも頷く。
一斉に立ち上がって、トルベを先頭にして部屋を出る。やはり、部屋の外にヨンスの姿はなかった。薄暗い廊下に出て、
警戒しながら突き当たりまで進むと、右手に灯りとヨンスの後ろ姿が見えた。妓楼の主メヒャンと、若い女が一、二、三、四、五人。忍ばせた得物の位置を確認しながらそちらに近づくと、女たちはさっと主の後ろに下がった。
ヨンスの背後から回って見てみると、ヨンスが女を一人掴まえていた。
「おい。どうした?」
理由を訊いているというのに、ヨンスは見向きもしない。
「おいっ!」
トルベが声を張り上げると、ヨンスがようやくこちらにを見た。我に返ったのか、女を引き寄せていた手を緩めた。
それでも離すことはない。不思議なことに女のほうも、掴まれた腕を振りほどくことはなかった。
「私の・・・許婚です。なぜここに居るのかはわかりませんが・・・私の許婚、ホンイです」
ヨンスの表情が戸惑いの色に変わる。それを聞いた途端、女の目からは涙がポロポロと零れ落ちた。
「・・・えっ?」
『お前の許婚がなぜ妓楼にいるのだ?いや、待て。ここは妓楼ではないとテジャンは仰っていた。ということは・・・
どういうことだ?』

トルベの背後で様子を見守っていたウダルチもお互いに顔を見合わせる。
「なんだ?」
「ヨンスの許婚だと?」
「あいつ、許婚がいたのか?」
「お前、知ってたか?」
問いかけばかりの小声が応酬する。忙しなくやり取りしているうちに、背後への警戒は疎かになる。一番後ろに立っていた
トクマンが不意に頭を小突かれて、大仰に驚きながら振り返る。
「テ、テジャン!」
声は廊下に響き渡り、皆がこちらを向く。
「何事だ?」
問われて返事に惑う。
「それが・・・よくわからないのです。ヨンスヒョンには許婚がいて。その許婚があの方らしいのですが。でもどうしてここに
居るのかはヒョンは知らなくて、それで・・・」
語尾が口ごもる。自分が知り得ていることはそれが全てだった。すると、テジャンは後ろを振り向いて、
「だそうですが・・・」
と話す。それで初めてテジャンの後ろに女が居ることに気づく。
『医仙?』
『医仙様だよな?』
チマは華やかな装いだが、黒のモンスを被っているせいで身体の上半分が全く見えない。
「あー、なるほど。わかったわ」
聞き覚えのある声が聞こえた。
と、モンスの前を開けてウンスが顔を見せる。平素は化粧っ気のない方だけに、しっかりと入った眉墨や目元と唇の赤みに
トクマンが見とれる。
「それじゃ、後のことは私に任せて」
一番最後に現れてしたり顔でそういうウンスに、ウダルチはただぽかんとするだけだった。

<つづく>
ご無沙汰しています。
更新がないときにもお訪ねくださって有難い気持ちでいっぱいです。

妓楼の間取りはテキトーなのであまり考えないでくださいまし(^_^;)

ちょっとずつ暖かくなってきましたね。
三寒四温の「温」を感じられるようになりました。
いつも遊びに行かせて頂いている梅の画などをを見せて頂きながら、
あっという間に過ぎていく(と思われる)三月の日々を慌ただしく
過ごしていきたいとおもいます。
曲が終わると、母とホンイは一言二言言葉を交わす。稽古が終わったのか、
しばらくして二人が四阿から出てくる。ヨンスは、母とホンイが家に入るのを
見送って、小路に戻るつもりでいた。けれど、二人はヨンスの予想に反して、
庭を散策し始めた。
ホンイと会う。その為に備えていたはずの心を、急に心もとなく感じたヨンスは、
塀と庭木に一旦その身を潜めることにした。ゆっくりとした足取りで話をしながら
庭を歩く二人が、やがてヨンスが潜んでいる辺りを通りかかったとき、ホンイが
足を止める。
「お義母様は、ソルソン様をご存じなのですか?」
幾分か驚いたようにホンイが尋ねるのと同時に、緊張で息を止めていたヨンスが
そっと息を吐く。
「ええ。私とソルソン(雪松:설송)は、師は違いましたが、互いに切磋琢磨し合う
輩(ともがら)でした」
二人に背を向ける格好で、その会話を聞くともなしに聞いていたヨンスは、ソルソンと
いう名が心に留まった。確か、入隊する半年ほど前に母を訪ねてきた方だ。ちょうど
帰宅と重なって、己が母に取り次いだ覚えがある。
「<双曲>の由来については、前に話したことがありましたね」
「はい。伽耶国の旋律と異国の曲調。二つの国の音色から成ることから、<双曲>と
名付けられたと」
「伽耶国の古い文献を紐解き、古の旋律を今に甦らせる。そのような試みの中で、
ソルソンはあの曲を世に生み出したのです」
『先ほどの聞き慣れない曲は、あの方が作ったものだったのか』
ヨンスは、ソルソンと会ったときのことを思い出す。母に取り次いだ際の思い詰めた
彼女の表情も。
「謂れを伺っているからでしょうか。初めて聴いたとき、どこか懐かしい心地が身体に
広がりました」
「ホンイ」
母が優しく名を呼ぶ。
「はい」
「先ほどの演奏、とてもよかったですよ」
「ありがとうございます」
「貴女が想いを込めた調べは、風に乗ってソンアク山の麓まで届いたでしょう」
ヨンスには母の言葉がすぐには飲みこめず、振り向いて二人を窺う。母とホンイの横
顔が見えた。ホンイは少し狼狽した色を見せる。
「『<双曲쌍곡>は、<想曲상곡>でもある。』いつかの、ソルソンの言葉です。貴女の
音色に込められた、<想い>を感じました」
「双曲は想曲・・・」
『双曲は想曲』
ヨンスも心の中で呟く。
「私が出来ること。いろいろと考えました。私が男であれば、お傍で兄様をお護りする。
そのようなことができたのかもしれません」
しばらく間を開けて、ホンイがポツリポツリと話し出す。
「まあ、途方もないことを考えたものですね」
呆れた口調だが、母の声はどこまでも優しい色合いだった。
「私にできることを探してみました。それで、見つけました。私にはカヤグムがありました。
このカヤグムの音(ね)がいくばくかの慰めと安らぎになればと・・・」
母がゆっくりと頷く。
「・・・お義母様、兄様は大丈夫でしょうか?」
「ホンイ」
『ホンイ・・・』
ホンイが胸の前で合わせた両手を、母の両手が包み込む。
「祈りが込められた貴女の音色は、あの子の元まで飛んでいき、悪しき気を退けて、きっと
あの子を守ってくれます。そして、疲れた身体と痛む心を優しく包み込んで癒すでしょう。
大丈夫ですよ」
固く握りしめられていた指がゆっくりと解ける様子をヨンスは見守る。
「・・・はい」

家に入る二人を見送ったあとも、ヨンスはしばらくその場に佇んでいた。

強くなりたい。
強くなる。
聖上をお護りし、己も生きるために。

力強く一歩を踏み出したヨンスが、ふと立ち止まる。
今までは何とも思っていなかったはずの、己を過る柔らかい風に笑みが漏れる。
あの音色に包み込まれている。
そんなことを思い浮かべ、わけもなく幸せだった。

<つづく>

新しいキャラのソルソンは既出のキャラです。
そーなんです。
ソルソン=メ○○○というわけで。