ドラマ「信義」関連の記事を更新しています。「韓国には行ったことがありません」からブログタイトル変更しました。
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h-imajinさんの一枚目の画をお借りして・・・
h-imajinさんの画

「春の嵐」

王宮の高台から臨むケギョンの春霞を、足を留めてしばし眺めたのは朝のこと。
日暮れが近づくにつれて長閑だった空は暗い色を帯び、彼方の空では春雷が
放つ一瞬の光をその雲に映し出している。

『来る』

御前を下がったヨンは帰宅を急ぐ。風防けを被り、徒歩(かち)で王宮の門を
出た途端、強い風に身体が煽られる。春の嵐はもう目の前まで迫っていた。
己を両足で踏ん張らせるほどのその風は、あっという間に松嶽(ソンアク)山を
駆け上り、松の木々をあらぬ方へと揺らす。僅かに見える山桜は、優美な姿
でその木の周りに舞い落ちることを許されず、薙ぎ払われて土埃とともに宙に
巻き上げられて、空の彼方へと去っていく。

朝の春霞と同じように、その様子をじっと眺めていたヨンは、風防けの頭巾を
目深に被り直して一歩踏み出す。
それを待っていたかのように、天から大粒の雨が地上のヨンめがけて降り始めた。

心が逸るのは、春雷に慄いているだろう妻を思う故だとしたら、腹の底からわき
出す奮然とした思いは何なのか。
先ほど目にした春嵐。人知が及ばぬ強大なその力を目の前にした、畏れにも似た
武者震いのせいなのか。
雨はもう下穿きや内着にまで滲みているのに、身体の芯は燃えるように熱い。
その熱さを持て余したヨンは、間もなくぬかるんだ道を一気に駆けだした。

帰宅すると、出迎えたのは妻だけだった。
通いの者たちは嵐が来る前に皆家に帰らせたのだという。
外着を脱いだ己の傍で、濡れた髪を忙しなく布で拭いながら妻がそう言った。
ぬぐい易いようにと頭を屈めると、豊かな胸の稜線に目がいく。
妻の手がふと止まる。

目が合う。

妻の目の奥に、ちらちらと熾る熾火を見た。

妻がくぐもった声で何か言い、離れる気配を感じた。
とっさに、妻の手を掴む。
「どこへ?」
逃げる素振りに、己の焔(ほむら)は一気に煽られる。

無言で妻の手を引いて家の中を歩く。
閨にはまだ火の気はない。
寝台に組み敷いた身体が熱を帯びてきたころ、腕にすがりついてきた妻が
「冷たい」と呟いた。
濡れた内着は身体にまとわりつき、紐は思うように解けない。
もどかしい気持ちで濡れたものを床に脱ぎ落とす。

暗闇に覆われた閨に、光が差しこむ。
障子をすり抜けた雷光が、妻の肢体を浮かびあがらせる。

昼の光のような眩しさではなく、かといって夜の灯りのような温かみはない。
月明かりに似てはいるが、煌々と照らす光ではない。
夜でもなく、昼でもない。
そんな世界に二人は居た。

すぐあとに、地を響かせながら雷鳴が轟く。
春雷に惹かれた内功が、表へ出たいとせがむのをどうにか鎮める。
再び、部屋の中が雷光に包まれる。
虎のような呻き声が、己の口から漏れた。

『今日は加減が出来ないかもしれない』

誘うように伸ばされた妻の手を握り返しながら、ふとそう思った

<おわり>
先週の火曜日、仕事の帰りにときどき聴いている「五時に夢中」で、
岩下尚文さんが「嵐が来る前にムラムラする」と仰っていました。
(車を運転しながらなので、TVだけどラジオ感覚なのヨン)

この前の大きな春の嵐があったでしょう?
その嵐が来る二日ほど前にムラムラ来たそうで(笑)

何となくこの話を憶えていて、h-imajinさんの画を見た瞬間ネタがヒラめいたのです。

h-imajinさん、有り難うございました♪


以上、ヨンとウンスのムラムラ話でした~
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此方では、例年よりも咲き始めるのが遅かった桜です。
先週末には雨が降る日もあり、早々に散ってしまうのではないかと思いましたが、
今年はどうやら長く傍にいてくれるようです。

それでも、はらはらと風に舞う花びらの数が増えてきたようなので、
もうすぐ見納めになりそうですね。

只今、WOWWOWで放送中の「麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~」を楽しく見ています。
今夜はその「麗」から、OSTをご紹介♪
とは言っても、未見の方もいらっしゃるでしょうから詳しいあらすじは省いて・・・
お気に入りの一曲を。



<必ずや戻らん> ※意訳

季節風に舞い上がって落ちた花びらは
一人残されて 哀しいほどに 寂しく

星々が去って行った空はもの悲しく
降り注ぐ雨のように泣いてばかりで

花たちは咲き 再び散る姿を見送るこの気持ちを
風に伝えておくれ

初雪が降ったら 願いは叶うという
その言葉を私は信じてる 切に願っている

哀しく切ない私の心を そなたが知っているのなら
私はまたそなたの元に必ずや戻らん


この曲を歌っているイム・ソンヘさんはオペラ歌手(ソプラノ)さんとのこと。
うっとりと聞き惚れてしまいます。

歌詞に出てくる「初雪が降ったら叶う願い」。
鳳仙花の花で爪を染めて、その色が初雪が降るまで残っていると願いは叶う。
韓国では有名な言い伝えで、ドラマの中でもそんなシーンがありました。

そろそろ見送ってやらねばならぬ桜ではありますが、
もうしばらくの逢瀬を、皆様もこの週末は楽しまれるのかなぁ・・・


『꼭 돌아오리(ッコクトラオリ)』 임선혜

계절에 흩날려 떨어진 꽃잎은
ケジョレ フンナルリョ トロジン コンニプン
홀로 남아 외로워 슬프도록

ホルロ ナマ ウェロウォ スルプドロク
별들이 떠나간 하늘은 서글퍼

ピョルドゥリ トナガン ハヌルン ソグルポ
내리는 빗물처럼 울고만 있네

ネリヌン ピンムルチョロム ウルコマン インネ
꽃들은 피고 또 지듯 보내는 마음

コットゥルンピゴットチドゥ ポネヌン マウム
바람에 전해주오

パラメ チョンヘジュオ
첫눈이 내리면 이뤄지는 소원

チョンヌニ ネリミョン イロォジヌン ソウォン
그말을 난 믿어요 간절한 소원

クマルル ナン ミドヨ カンジョラン ソウォン
애달픈 나의 마음을 그대 안다면

エダルプン ナエ マウムル クデ アンダミョン

다시 꼭 돌아오리
タシッコク トラオリ

「やっぱりこれ、邪魔だったわ」
ウンスは赤のモンスをさっと外す。物音とトルベの声に、部屋を出て様子を見にいこうとしたウンスをヨ
ンが引き留めて、「これと、これを」と渡されたのだ。言われるままに急いでチョゴリを羽織って紐を締
め、モンスを被ったものの、視界が悪かった。
ウダルチは、妓生のようなウンスに見とれるが、その視線を遮るようにヨンがウンスの傍に立ったので、
わざとらしく視線を外すほかなかった。
ウンスは割れた人垣をスタスタと歩いていくと、ヨンスとホンイの前で立ち止まる。
「ヨンスさん。貴方に用があって、ウダルチのみんなと一緒に来てもらったんだけど・・・」
「・・・私にですか?」
「ええ。でも、その用件は済んじゃったわ」
ニコッと微笑みかけられても、ヨンスはどう応じればよいのかわからない。いつしか、ホンイを掴まえて
いた手からも力が抜けて、するりとホンイの腕が離れる。
「メヒャンさん、どこか部屋を貸してもらえますか?」
「はい。こちらへ」
察したメヒャンが先に立つ。
「それじゃ、ヨンスさんとホンイは私と一緒に来て。あとのみんなは・・・」
「部屋で待機だ」
ウンスの語尾を拾うように隣からヨンが言い繋ぐと、トルベらが「はい」とすぐさま返事をする。
「あなた達も部屋に戻っていて」
メヒャンにそう声をかけられたトンニョンたちは、「はい」と返事をしたものの、皆心配そうな顔つきで
五人を見送った。

部屋にはヨンスとホンイ、そしてウンスの三人。
「ヨンスさん」
「はい」
「私、貴方をここに呼んで、確かめたいことがあったの」
「・・・何をでしょうか?」
「でも、それはもういいわ。さっきわかったから」
満足げに頷くウンスとは逆に、ヨンスの顔には戸惑いが広がる。
<果たしてヨンスはホンイのことを憶えているのか>
ホンイの話を聞いた限りでは、ヨンスはホンイのことを朝貢から守るためだけに婚約しただけで、彼には
他に本命の子がいるのだと思っていた。
けれど、先ほど廊下で見せたヨンスの目を見た時、それは違うのだと直感した。何とも思っていない子に
向ける目ではない。少なくともウンスはそう感じていた。
「あのね、ヨンスさん。ホンイから貴方に直接渡したいものがあるそうなんだけど」
ウンスがそう話を切り出すと、ヨンスは思い当たることがあったのか、ハッとした。
「・・・存じています。母が文で知らせて来ましたので」
伏し目がちに答えるヨンスの顔色は暗い。その表情を見たウンスは手応えを確かなものに感じて、言葉を続ける。
「そう。でも、私はその前にまず二人で話をするべきだと思って、それでヨンスさんをここに呼んだの。
ヨンスさん、貴方はどうしてひと目見て彼女が許婚のホンイさんだとわかったのかしら?確か、数年前に
一度か二度会ったきりだと聞いたけれど」
「それは・・・」
言いよどむヨンスに、ウンスはにっこりと笑う。
「じゃ、先ずはその理由(わけ)を彼女に話して。私は席を外すから」
ウンスはホンイに目をやる。ホンイは初めて会ったときのようにすがるような目を見せたりはせず、しっかりとこちらを
見返してくれた。
ウンスは安心して部屋を出る。

部屋を出るとヨンが待っていて、少し距離を置いたところにメヒャンが立っていた。
「話は終わったのですか?」
「ええ、まあ」
「ヨンスだったのですね」
「そうなの。貴方にまだ詳しいことを話してなかったわね」
「それは戻ってから伺います」
「・・・そう?」
「ええ。ではすぐに戻りましょう」
言うが早いか、背中をぐいぐい押して歩かせようとするヨンにウンスが慌てる。
「え?今から?」
「朝帰りすれば目立ちます。今なら夜もそれほど更けていない」
「イヤって言っても?」
立ち止まったヨンがウンスをじっと見る。「否」はない。目がそう言っていた。
「ふーっ、わかったわ」
あっさりと折れたウンスに、ヨンが怪訝な表情で覗き込む。
「なに?」
「聞き分けがいいので」
何か言い返そうとしたウンスがはたとする。
「あ、そうだ。着替えなきゃ」
このままでは目立つ。二人は立ち止まる。
「あの、チェ・ヨン様」
ずっとついてきていたメヒャンがそこで初めて口を開いた。
「酒と肴を用意してございます。せめてそれを召し上がってからでも」
「いや、いい。それよりこの方の着替えを急いでくれ」
「では、お召し替えが終わるまで、お待ちになっている皆様に酒と肴を・・・」
「用意が出来たらすぐに出るからいい」
取りつく島がない。大体の人はここで諦めるのだが、メヒャンは諦めなかった。
「お召し替えには一茶(十五分)ほどかかります。飲まず食わずのままでお客様にお帰り頂くわけには
参りません。医仙様を無理にお引き留めしたお詫びに、せめて・・・」
「要らん」
「(出た。『要らん』)」
互いに譲らない二人を前に、ウンスはしばらく傍観していたが・・・
「ねえ、じゃ、こうしましょう」
と提案を出す。
「私もお腹がすいたまま帰るのは辛いわ。でも、遅くなっても困るし。だから、簡単にお腹に入れられる
虫養いをご馳走してもらえますか?それなら食べるのに時間はかからないから」
「・・・」
ヨンは腕を組んだものの、何も言わない。今から戻ったところで兵舎に食べるものがないことはわかり
きっていた。
「『要らん』とは言わないから、それでいいみたいよ」
ニコッとメヒャンに微笑み、メヒャンは胸を撫で下ろす。
「ありがとうございます。では、早速お召し替えと食事の用意をしてまいります」
メヒャンがそそくさと席を外すと、ウンスが呟く。
「ねえ、私の勝ちね」
ガッツポーズをしてみせるが、それをしれっとスルーされた。
「・・・」
何か言いたげな口元だったけれど、いざ口にするとなると面倒だったらしい。歩きだした後ろ姿が少し
不貞腐れた様子で、ウンスは笑いをこらえながら後に続いた。

<つづく>

やってしまった(T_T)
前回更新した内容

誤:黒のモンス
正:赤のモンス

記憶があやふやすぎる。
そして、そして・・・
「なんで私、ウンスにモンスを被らせたんだよぉ(T_T)」
ウンスにモンスを被らせた(脱いでいたのに)・・・グスン
ウンスとモンス・・・
なんか似てる。

そしてそして・・・ヨンスとホンイ。
あとのことは二人に任せてってことで。
フェイドアウトしていくと思います。

昨日の夜、蜈蚣が出ました。
今年初の蜈蚣です。
なにかの暗示でしょうか?
(「完結、早く書けよ」とか・・・小さい字で書いてみた)
ヨンは自室に入ると鬼剣を壁に掛け、腕抜きの紐を解く。外した腕抜きを卓の上に置き、
帯を解いて上衣を脱ぐ。脱いだものを部屋の手すりにかけると、そのまま手すりに身体を
預ける。
数歩先の寝台、部屋の隅の長椅子、背中越しの床。それらをさっと一瞥すると、短いため
息を漏らす。万に一つというその妙な夢というものを、今の己は見てしまいそうな気がして
眠ることは諦めた。
問題は薬の効き目が切れるまで、どうやって過ごすかだ。
そこまで考えて自嘲じみた笑いが漏れる。
『滑稽だ』
己が見せる夢に、狼狽えて眠ることもままならない。けれど、数日前に見た夢は確実に
己を典醫寺から遠ざけていた。
あの方を目の前にしたら、抑えが利かなくなってしまうのではないかという危惧。
『あとは・・・』
顔を上げる。
『そうだ。オレは怖いのだ』
夢は己に都合のよいものばかりを見せた。けれど、現(うつつ)ではどうなのか。それを
知るのが怖かった。
ふと、腹に手を当てる。
あの方が切り、縫った傷が疼(うず)いた。この疼きが身体に広がると居てもたってもいられ
なくなる。夢を見てからというもの、その疼きは毎晩己を悩ませた。
『では、今日も・・・』
手すりにかけておいた上衣を手に取ろうとして、その手を止める。
疲れ果てて、夢も見ないほど深く眠ればいい。そう考えて康安殿から下がったあとに、夜の
鍛錬を見るようにした。いつもはチュンソクに任せている鍛錬だったが、己が見るというと
皆が「我も我も」と手合せを願い出てきた。
だが、昨日あたりから部下たちが露骨に視線を避けるようになった。懇願する皆の視線を
一身に受けたチュンソクが、
「あの、テジャン。夜の鍛錬はやはり私が・・・」
と言いにくそうにしているので、仕方なく察した。

改めて、朝までどうするかを考えていると、フッと部屋の灯りが消えた。明かりは柱に一つ
しか点けておらず、何かの拍子に消えても特段に驚きはしない。
けれど、次の瞬間ヨンの身体に緊張が走った。

瞬きをする間に闇が入れ替わった。
手にじっとりと汗がにじむ。
香の匂いが鼻をつく。
『ここは・・・どこだ?』
見知らぬ闇に息苦しさを覚える。身動きはせず、目が暗闇に慣れるのを待った。頭上から
仄かな明かりが漏れており、それでようやく周囲の状況がわかった。
夜の空井(からい)の底。
己が立っているのは、そんな場所だった。
『これは・・・夢なのか?』

ウンスは部屋に入ると、無造作に束ねていた髪を下ろす。卓の椅子に腰かけて、手拭いで
髪の水気を根元から毛先へと丁寧に吸い取っていく。機械的に手を動かしていたその視線
の先に、揺れる秉燭(ひょうそく)の炎があった。
じっと見つめる。いつの間にか手は止まっていた。
「ふーっ」
大きなため息を一つ吐いて、机に突っ伏す。そのままでしばらく動かなかったウンスが顔を
横に向ける。
ふと、棚の上に置いた麒麟の香炉に目が留まる。
それは、昼間にイムグムニム(王様)から賜った品だった。前にもらった高麗青磁を割って
しまったことを知ったイムグムニムが、「好きなものを持っていきなさい」と見せてくれた品々の
中にそれは居た。
縦横20センチほどの香炉。丸みを帯びた麒麟のフォルムがなんとも可愛らしい。ひと目ぼれ
だった。背中のところに蓋があって、そこに香を入れて焚くらしい。両耳の穴から煙が立ち昇る
そうで、それらしい穴が空いていた。
ウンスは麒麟の香炉を手にとって、そのまま暫く麒麟を眺める。磁器で出来ているから冷たくて
滑らかな手触りのはずなのに、それはまるで生きているように温もりがあった。
「なんでだろう?」
呟いたものの、さして気には留めない。じっと見つめていると、麒麟は居たたまれない、困った
顔をしているようにも見える。
「ぬいぐるみに話しかける人の気が知れないって思ったけど・・・」
青磁の頭を撫でる。
「ふふふ。悪くないわ」
ウンスは頬杖をついて、卓の上に置いた麒麟との一方的なおしゃべりに興じる。
「知ってる?ウダルチの鎧にはあなたがデザインされているのよ」
あの人の鎧は、前に二つ、後ろに一つ。麒麟のふんぞり返った鼻の頭を人差し指でツンツン
しながら、ウンスはヨンを思い浮かべた。
「テジャンは今日どうしてた?ねえ、教えて」
手を引っ込めると、頬杖をつく。じっと麒麟を見つめたあと、ハーッと大きなため息をついて
机に突っ伏す。
「ユ・ウンス、お前はどうしちゃったのよ」
ゴツンと卓に額を当てる。ゴツン。もう一度軽くコツンと当ててから、ゆっくりと顔を上げる。
「会いたいな」
もう何日も顔を見ていない。口にすると余計に会いたさが募った。
「ヒヒン(히힝)、ちゃんとご主人様を護ってね。ウダルチの子たちもよ。わかった?」
手を伸ばして麒麟の背中を撫でてやる。ふと、蓋の部分が気になった。
「何か入ってるのかな?」
開けた瞬間煙のようなものが立ち昇ったように見えた。そのあと、スッと鼻腔に抜ける香りが
した。中を覗いてみるが、暗くてよく見えなかった。それ以上の関心もなく、ウンスは蓋を閉じた。

翌朝。
とんとん。
肩を叩かれる。
それから逃げるように寝返りを打つ。
とんとん。
無反応。
すると今度は、グラグラと身体を揺すぶられた。
仕方なく目を開ける。
「トギ、早くない?」
いつもより暗い部屋の中を見渡して、ウンスが文句を言うと、
<テジャンが来てる>
とトギが手振りで伝えた。
「・・・えっ!?ま、待って。ちょっとだけ、待っててもらって!」
慌てたせいで声が大きくなった。トギが伝える必要はない。その声は外で待っていたヨンの
耳にまで届いた。

「おはよう、パートナー」
ウンスが表に迎えに出ると、ヨンが振り向いた。
「しばらくこちらには参っておりませんでしたので、様子を見に伺いました」
しばらく会わないと、この人はいつもこんな風に距離を置いた言い方をする。
「入って。お茶を淹れるから」
断られてしまう前に返事を待たず、さっさと中に入る。ヨンがあとをついてくると、
ウンスは小さくガッツポーズをした。

「どうぞ」
席についたヨンに、ウンスがお茶を差し出すと、ヨンはそのお茶を黙って飲む。
向かいに座ろうとしたウンスが、ヨンの傍を通り過ぎたときにふと気づく。
「あら?貴方、ヒヒンと同じお香の匂いがするわ」
「ゲホッ!」
ウンスがそう呟いた途端、ヨンが盛大にむせた。

らしくない。
何だか可笑しくてウンスはクスクス笑う。

ばつが悪い。
面白くない顔をしてみるが、長くは続かない。目の前で楽しそうに笑うウンスの笑顔に、
頬が緩む。

『逢いたかった』
『逢いたかった』
その瞬間二人は同じことを思っていた。

<おわり>

j様の帰国までに間に合ったかしらん(汗)

下書きはほぼ出来上がっていたのですが、ウンス版とかなり似通っていた(T_T)
で、テイストを変えてみたくていろいろ試行錯誤。

モデルになったのはこの子です。
(画像はウィキからお借りしました)
麒麟の香炉

りえさんの「処方」から広がったお話。

チャン・ビンが処方したものを「ウンスが飲んだら・・・」というお話を前にアップしました。
今回は「ヨンが飲んだらどうなる?」ってことでお話を書きました。
とりあえず前半が書けましたので、アップします。
読み切りじゃなくなったので、テーマを編集しています。
前の記事で更新通知が届いてしまったかもしれませんが、スルーでお願いします<(_ _)>

では、どうぞ~

ちなみに二人を話をしているのはここ。(夜の設定で)
SnapCrab_NoName_2017-3-30_4-32-52_No-00.png

***********
夜更け。
康安殿から戻ってきたヨンに、「御医が来られています」と部下が告げる。
「用向きは?」
兵舎の二階。椅子を勧めながらチェ・ヨンが尋ねると、チャン・ビンは携えてきた
手提げから細長い瓶と小さな杯を取り出して卓に置く。瓶の中身が杯に注がれると
独特な香りが立った。
チャン・ビンは、その杯をすっとヨンの前に差し出すと、ヨンと向い合せに座る。
杯を一瞥したヨンが目で尋ねる。
「薬です」
「薬?」
「近頃テジャンが腹や胸に手を当てて、痛みを抑えていらっしゃる。声をかけるのが
憚るほど深く悩んでおられて、夜もあまり眠れぬご様子だ。ウダルチが代わる代わる
典醫寺にやって来ては、そのようなことを申し立てますので薬を処方して参りました」
ヨンは、黙って階下を見下ろす。夜もかなり更けているというのに、さしたる用もな
くウロウロとしている者が何人かいた。視線を感じた部下たちが、ぎこちない動作で
慌てて四方へ散る。その様を見届けてから、チャン・ビンの方に向き直る。
「要らん」
薬で治るものではない。そのことは、己が一番よくわかっていた。用が済んだので
ヨンは席を立つが、チャン・ビンは座ったままで動く素振りがない。
「これは細心の注意を払い、手間をかけて処方したものです。薬の元となる材料は
手に入りにくく、また手に入ったとしてもごく僅かで、此の度は二杯分しかとれません
でした」
『何が言いたい?』
ヨンが胡乱な目で見下ろすと、チャン・ビンはその視線を受け止めて、
「そのうちの一杯を、先日医仙に処方致しました」
と告げる。ヨンはおもむろに卓に手をつき、チャン・ビンの顔を覗きこむ。
「どういうことだ?」
尋ねるヨンの声は震えていた。
「医仙もテジャンと同じ病でした。胸が騒ぎ、物思いがやめられず、食欲も失せて、
眠りも浅くなっておりましたが、幸いにも処方がよく効いたようです。」
チャン・ビンの言葉に、ヨンは緊張で詰めていた息を吐くと、姿勢を正す。
「それは重畳。ではこれも医仙に持っていけ」
「摂り過ぎれば毒になる。それが薬というものです。これは医仙にはもう用のない
ものですが、今のテジャンには必要かと」
「御医」
「テジャン」
ヨンとチャン・ビン。二人の睨み合いはさほど長く続かないのが常だった。どちらかが
一方の意を汲んで折れる。大概はチャン・ビンが折れるのだが、今回は面倒になった
ヨンが折れた。
ヨンはついと手を伸ばすと、立ったままで杯の中身を一気にあおる。
「酒ではないか」
「いいえ、薬です」
至って真顔でチャン・ビンは答える。喉ごしは悪くなかったが、飲んだあと鼻に抜ける
香りが独特で強かった。
帰るチャン・ビンを戸口まで送ろうとすると、「こちらで結構です」とチャン・ビンが階段の
前で辞退した。下りていくチャン・ビンをヨンが見送っていると、
「ああ、そうでした」
と、チャン・ビンが振り返る。
「・・・何だ?」
「あの薬、実によく効くのですが、妙な夢を見る作用がごく稀に出ると聞いております。
万に一つ、そのような夢をご覧になっても、あまり驚かれませんように」
「なぜ今言う?」
明らかに不機嫌な声でヨンが問う。
「申し訳ありませぬ。飲んだ者が必ずしもそうなるわけではない故、忘れておりました」

友はそう詫びたあと、帰っていった。
ヨンは、腕組みをしてしばらくその場に立ち尽くす。
詫びながらも、友がどこか愉快そうな表情を押し殺しているように見えたのは、持っている
手蜀の灯りが揺れたせいだろうか。

<つづく>
ウダルチ宿舎の二階。この造り、どうなっているんだったかしらん?とシンイファンの方々の
ブログをいろいろと訪問させて頂きました。
(h様、ありがとうございました♪)

あ、今回はまだヘンシーンしておりませんが・・・
jさん、正解ヨン(^O^)/
貴女はすごかった。
さすが、モノに命は宿る設定を書いておられる御方♪