ドラマ「信義」関連の記事を更新しています。「韓国には行ったことがありません」からブログタイトル変更しました。
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「ソルソン」
「はい」
「ケギョンでの暮らしは慣れましたか?」
「はい。お陰様で」
「そう。それは良かった」
イェリムは柔和な笑顔をソルソンに向けた。
「いろいろとお骨折り頂き、有り難うございます」
「いいえ。貴女がいてくれて良かったわ。熱心に呼んで頂けるのは喜ばしいことだけれど、
カマ(駕籠)に長い間乗ると、どうしても身体のあちこちに痛みが残って取れないのよ。
かといって、無下に断ると門が立つような方々も中にはいらっしゃることだし。貴女が
名代(みょうだい)で稽古に行ってくれるようになって、本当に助かっているのよ。身体の
節々の痛みも随分軽くなったわ」
イェリムは、ケギョンでは著名なカヤグムの奏者で、数年前までカンファドに住んでいた。
ソルソンは彼女を師匠としてその教えを受け、とりわけ熱心に学んだ愛弟子だった。
ソルソンが渦中に身を置いていたとき、イェリムは手を貸して欲しいと文を寄越してくれた。
当初、しばらくカンファドを離れることを決めたソルソンは、ミヨンの叔母の家に身を寄せる
つもりだったが、そちらで近々慶事があることを知って、二の足を踏んでいた。イェリムからの
文は、ソルソンにとっても渡りに舟だった。

朝から晩までカヤグムのことだけを考えて暮らす。そんな日々の中で、ソルソンには新しい
交流が生まれていた。
ユン・ヘジョン。
彼女の師匠はイェリムと肩を並べる著名なカヤグムの奏者で、ヘジョンはその一番弟子だった。
たまにしか会わない仲で、しかも性格は正反対なのに、二人は意気投合して互いの演奏を聴いて
は忌憚のない意見を交わして腕を磨いた。
ヘジョンは、ソルソンが時折見せる表情が気になっていた。それは決まってソンアク(松嶽)山を
眺めているときに見せる表情だった。ソルソンが夫を亡くしていることは、ヘジョンも知っていた。
それでヘジョンは、彼女が亡き夫君のことを思っているのだと当初は考えていた。
「亡くなったご主人のことを考えているの?」
そう尋ねたことがある。けれど、そのときのソルソンは、全く別の表情を見せた。哀切と懊悩。
喩えて言うならば、そんな色だった。ヘジョンが夫君のことを尋ねたのは、それきりになった。
けれど、ソンアク山を見つめているソルソンからは、少なくとも懊悩の色は感じられない。
「ソンアク山が好きなの?」
山並みを眺めるソルソンの横に立ち、ヘジョンが問うと、ソルソンは小さく微笑んだ。
「ええ」
「私には、見慣れた山だわ。どこが好きなの?」
ケギョンで生まれ育ったヘジョンにとって、それは当たり前の風景の一つだった。
「松の木々の姿が美しいわ。荒々しく厳しい岩だらけの地面に根を張り、風にその幹を曲げられ
ようとも真っ直ぐに立とうとするその姿に引きつけられるの」
山並みに視線を向けたまま、ソルソンはそう言った。ヘジョンは心が躍った。当たり前の風景だが、
ヘジョンが大事に思う故郷の風景を、友が美しいと言ってくれたことが嬉しかった。
「ソンアク山の山並みは、遠くから見ると身重の女性が横たわる姿に似ているとも言われているのよ」
「そんな風に見えるわ」
ソルソンは、その話を知っていたようだ。しばらく黙って眺めていたヘジョンがおもむろに尋ねる。
「お母様に会いたい?」
望郷、或いは人恋しさを、ヘジョンはソルソンの瞳から読み取った。
「・・・そうね」
「カンファドは遠いものね」
ソルソンを慮ったヘジョンの言葉に、ソルソンは曖昧な笑みを浮かべた。

母は私を身ごもったとき、どう思ったのだろう。

ケギョンの山並みを見つめるうちに、そんなことを考えている自分に気づいた。
間もなく、ソンド(松都 ケギョンの別名)で暮らし始めて三月を迎えるころのことだった。

<つづく>

「紅楼夢」で出たヨンスの母が登場。
(久しぶりすぎて、名前違っていたらごめんなさい)

≪このお話の主な登場人物≫
 ★マークは「信義」のドラマか小説に登場していたキャラ
 〇マークは私が設定したキャラ

○ソルソン(雪松)
「紅楼夢」では、妓楼ソガン亭の主メヒャン(梅香)として登場。
 カンファドの宿屋を営む夫婦の一人娘。
 八歳でサンホと婚姻した。

○サンホ
 ホンサム(紅参:高麗人参)を取り扱う問屋の長男。
 十二歳でソルソンを娶る。

○ミヨン
 ソルソンの母。

○タンジ
 ソルソンの父。
 カンファドで宿屋をいくつか営んでいる。

★マンボ
 表向きは「マンボの薬売り」。裏の顔は、ケギョンの情報を掌握しているという
 噂の手裏房(スリバン)の頭目。

★コンジャ(→名前は私が勝手につけています)
 マンボの妹。
 兄の右腕としてスリバンを支える。

★コサ(白い人)→名前だけは台本に載っていた。
 スリバンの一味。
 幼少の頃からスリバンに属していた(という私が考えた設定)

★ムン・チフ

○ヘジョン
 ソルソンの友。カヤグムの奏者。
 「紅楼夢」に登場するヨンスの母。
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チフは、ソルソンがケギョンにいる経緯を聞いて言葉を失くした。

マンボは、毎年カンファドへ渡り、妹ソルソンの消息を知らせてくれていた。
数日前、一年振りにマンボがカンファドへ行くと、ソルソンの姿がなかった。急いで周辺に聞き込んだマン
ボは、ソルソンがケギョンに行ったことを突き止めると、すぐに碧瀾渡(ピョンナンド)行きの船に乗り込
んで、渡って来たばかりの海を再び取って返した。船が港に着くと今度は一目散にケギョンを目指し、訪ね
た先でようやくソルソンを探し当てた。

昨年の秋、ソルソンの夫サンホが落雷により非業の死を遂げた。衝撃を受けた姑は次第に心を病んでいった。
雷が落ちた場所には、サンホ以外にも何人か立っていたが、皆身体の痺れや軽い火傷などで済んでおり、
サンホだけが命を落とすこととなった。
なぜサンホだけが死んだのか。姑は、その理由を追い求め、執着した。
そんな折、姑は一人の女と出会う。姑が「先生」と呼んだその女は、貰い子のソルソンを娶ったが故にサンホは
天誅(てんちゅう)を下されたのだと告げた。喪失の淵に共に立ち、苦しみを分かち合っているソルソンこそが
根源だったと知った姑は激昂し、ソルソンとその両親であるタンジたちを一方的に責めたてて、騒ぎを起こした。
曰(いわ)くつきの女。
ソルソンを貶める噂は一気に広まり、耐えかねたソルソンはカンファドを離れ、知己を頼ってケギョンへと
出てきた。

話を聞き終えたチフはその場を後にした。
狭い路地を何度か曲がりながら歩を進める。その歩みは常よりも大きな歩幅で、身の内から荒ぶる気が、考
えるよりも先に、脚を前へと運ばせる。路地がもう少し広ければ、チフはとっくに走り出していただろう。
が、あと数歩で大通りへ出るという地点で、勢いに乗ったはずのチフの足が唐突に止まった。
そして、打って変わってゆっくりとした足取りで大通りまで出ると、左右に分かれた通りのうち、右手の通
りへと目をやった。その道を行けば、ソルソンが身を寄せているというカヤグムの指導者イェリムの家があった。
チフは俯いたまま、沓の先を左の方向に向けると、ようやっと一歩踏み出した。そうして歩き始めると、歩幅を
大きめに取りながら足を運ぶ。
だが、辻をいくらも行かぬうちに、その歩みは鈍くなった。

ソルソンのことを思わずにはいられなかった。夫との夫婦仲は大層睦まじいと聞いていただけに、その喪失
の大きさは、想像するに難(かた)くない。慣れぬ地で暮らすことになった経緯もまた憂うべきもので、此の地で
暮らすソルソンのことが気がかりだった。

だが・・・
「あの娘の幸せを願うなら、会わぬことだ」
亡き父のその言葉は、チフの脳裏に強く焼き付いていた。

父と己は、捨てられた妹を見つけた。
けれど、連れて帰ることはしなかった。
己もまた、父の言葉が正しいのだと、そのときに悟った。

その言葉は、長らくチフの重い足枷となり、カンファドへ足が向くことはなかった。
だが、今日だけはその足枷が、無いに等しい程軽く思えた。

「ヒョン」
マンボが呼ぶ声がすぐ傍で聞こえ、チフは物思いから覚める。師弟のほうに視線を向けると、気遣わしげな
目とぶつかる。
「どうした?」
一定の距離を保ちながらマンボ兄妹がついて来ていることはわかっていた。チフの問いかけに、マンボは声
を潜めてあごをしゃくる。
「ソルソンが、こっちへ歩いてくる」
反射的に前を見る。通りを歩いている女は数人。子供連れが一人、もう一人の若い女は夫婦だった。チフが
目を走らせたその先に、ソルソンと思しき若い女が歩いていた。
チフは身体が凍りついたように動けなくなった。
目が逸らせない。
すらりとした首筋、整った顔立ちに母の面影を探してみたが、妹と母がうまく重ならない。

ソルソンは凝視するチフに一瞥もくれることなく、その傍を通り過ぎた。

チフは振り返り、妹の後ろ姿を見つめた。
その姿が、雑踏の中に消えていくまで。

ソルソン。
チフと同じ日に生を受けた妹との、十数年振りの再会だった。

<つづく>

二か月以上ぶりに更新(-_-;)
設定忘れすぎて、思い出すのに四苦八苦でした。
おはようございます♪

いろいろありましたが、ひと段落しましたので元の生活リズムに戻りました。
元に戻ったとはいえ、自分の自由時間が以前よりは少し減ってしまった。
でも、自分の時間が減ったことを嘆いていると前には進めない。
それはもうわかっていることなので、手元に残った自分時間を大切にして楽しむことにします。

更新が止まっている間も当ブログをお訪ねくださった方々に感謝です。
離れている間の不安な気持ちを、随分と支えて頂きました。
ありがとうございました。

「開京想曲」。
ケギョンの通りに放り出してきたチフを回収しにいかねばと思い、続きをあーでもないこーでもないと
書いているのですが全く進まず(^_^;)
私は書くときによく迷い、時間を使い込んでいるなぁと実感。
ここをどうにかせねば(笑)

ひとまず、「戻ってきました♪」の挨拶でしたっ


おはようございます。

長いと思った8月も今日で終わり。
気づけば蝉の鳴き声も何だかトーンダウンしてますね。

8月。
いろいろありまして、PCの前に座る時間がほとんどなくなってしまいました。
隊長のこと、家族のこと、仕事のこと。
これらがいっぺんに状況変化してしまい(或いは変化の兆しあり)、
今は、シンイにあまり触れることもなく日々を過ごしています。

しばらく更新ができそうにないので、取り急ぎそのことを連絡させて頂きます。
落ち着いたら戻ってきますね。

二次の話が途中になってしまい、申し訳ありません。
気長にお待ち頂けると嬉しいです。

ガラケーで、いつも伺っているサイトを時折覗いています。
動画は動かないし、サイトによっては一部しか表示されないこともあり、
ろくな環境ではありませんが、それでもシンイに触れることで気持ちがホッとするのです。
いつまでも触れていたい。
私にとってのシンイはそんな存在なのだと改めて思いました。

それでは、皆様今日もよい一日を


おりーぶ
百日紅_白
(画像お借りしました)

おはようございます。

庭の百日紅(濃いピンク色)が元気です。
ガクアジサイが咲いている隣で、フライング気味に咲き始めたときは驚きました。
「早いってば」

白い花を咲かせる百日紅はまだ咲いていません。
木の位置が日陰にあるからでしょうか。
夏の終わりごろにわんさかと花を咲かせてくれますが、今はまだということで画像をお借りしました。

ギラギラと照りつける太陽に向かって枝を伸ばして咲く様はまさに夏の花。
青い空と白い花、もしくは濃いピンクの花の対比がきれいです。

以前ほどの熱量ではなくなったかもしれませんが、私の頭の中にはシンイがあります。
時間を忘れて楽しむことができる。(時間が足りないと嘆くほうが多いかも)
ありがたいことです。

貴方に、この感謝の気持ちが届きますように・・・


キム・ジョンハク氏の命日に寄せて